Toineの感想文

肉体の森のToineの感想文のレビュー・感想・評価

肉体の森(2010年製作の映画)
4.2
【画作りがありえんくらい美麗すぎて森】
私の中でブノワ・ジャコー監督作品は当たり外れがありますが今作は当たりでした♡
フランス映画の愛の描き方ってえげつない。
もともと恋愛映画って苦手だったのですが一部のフランス映画のお陰で進んで観るようになりました。
例によって今作もとんでもなかったです。

全てを見透かしたかのようなナウエル・ペレーズ・ビスカヤート氏のギョロギョロとした瞳。
南仏の美しいロケーションと清廉潔白な女性。
それとは正反対の獲物を狙うギラギラした獣みたいな小汚い男性との対比が素晴らしい。
ていうかナウエル氏もヒロインのイジルドさんも凄く個性的なお顔立ちなのが役にハマっていて良き!
キャスティング大成功だと思います。

ストーリーは大変気持ちが悪かったですし凄く複雑で難しい愛のお話でした。
始まりは催眠術で抵抗できないよう操りジョセフィーヌ(イジルド)さんを強○するティモテ(ナウエル)…。
だけどあれを愛って認めたくないなー。
彼女の行動はストックホルム症候群だったのだと自分の心に言い聞かせたい。
だって自分を強○した男性を好きになるなんて本当に理解できないししたくない。
レ○プから始まる恋愛なんて胸クソ悪すぎる。

ジョセフィーヌさんの純白のドレスがティモテと交わって行く時の流れと共に少しずつ薄汚れて行くのが、彼女の純血が汚されていくメタファーのようでした。

裁判中の目配せ。
彼に注がれる柔らかい微笑み。
やっぱり好きになっちゃったんだよね彼のこと。
彼もジョセフィーヌさんを失いそうになった時に涙を流し彼女に惹かれているのが分かる。
後半は立場が逆転しまるでティモテがジョセフィーヌさんから催眠術をかけられたかのよう。
彼女の望むように行動していく。
とても嬉しそうな表情で。
ジョセフィーヌさんはティモテからされた事を憎んでいるというより彼の愛を試しているみたいに見えた。
本当に私のことを愛しているなら地獄の業火にだって喜んで飛び込んで行けるでしょ?みたいな。
この辺りの描写はメンヘラ感が漂ってて良かったです。

マチュー・シモネ様演じる脇役のポール様がイケメン。
ていうか内容が凄すぎて忘れてましたが元はと言えばマチュー様お目当てで軽い気持ちで観始めたんです。
ポール様がジョセフィーヌさんに贈った詩。
冒頭で文才を活かして作家になる事を勧めるジョセフィーヌさん。
これも伏線だったのですね。
彼女は人を見る目がある。未来も何もかも見透かしてる感じ。
そこはティモテと似ている。
もしかしたらティモテ以上に不思議な力を持っているのかも。
人物描写が深堀りできるところも良き良き。

結局ポール様と結婚しても心はティモテのものっていう。
あの男(ティモテ)の思うツボな展開なのが許せない。
でも死ぬほど面白かった。
観てる側の気持ちの落とし所が分からない本当に不思議な魅力のある映画でした。