KnightsofOdessa

ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.5
[時代の記録、三日間の祭典の記録] 70点

当時の熱気を肌で感じるようなドキュメンタリー映画としては、セルゲイ・ロズニツァによる凄まじき大傑作『The Event』と肉薄する部分も少なからずあるが、同作が群衆を群衆として捉えているのに対し、本作品では群衆をサンプリング(=インタビュー)することで当時の社会情勢をモザイク的に再構成しようとしている。その点、ロズニツァよりも親切ではあるかもしれない。加えて、コンサート録画系ドキュメンタリーでは考えられないくらいカメラマンが舞台上を歩き回ってる上に、編集やスプリットスクリーンもキマリまくってて、実はその場にいた観客以上の"臨場感"を楽しめてるんじゃなかろうか。雨が降ってもみんなが"タワーに注意しろ"という呼びかけに従って、なんなら天然の風呂だ!というくらいに全裸になる者もいれば、泥のスライダーで遊ぶ者もいて、空間の自由さと平和さと無秩序さを象徴しているかのようだった。

面白いのは観客だけでなくトイレ清掃や警備など運営側にも目が向けられるとこだろう。参加していない近隣住民も含めて、それらすべてがウッドストックに参加した、そして歴史に参加した人間として回収されるパワーが本作品にはある。最後に棄ててあった靴を拾ってるカップルを観て、ここがある種の戦場であったことを思い知らされた。
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