常に原作ものを撮り続けてきたキューブリック監督作品の中で、唯一本作は原作も書いている。
Story by S.Kubrickは、後にも先にもないのです。
そのほか、脚本、製作、撮影、編集をひとりでやってのけた、
非常にキューブリック度の高い作品なのです。
ただ、やっぱりというべきか、
ストーリーはあまり面白くない。
落ち目のボクサーと恋に落ちたキャバレーのダンサー。
二人は一緒になろうとするが、この女はヤクザの情婦であった。
激情した子のヤクザは、間違ってボクサーのマネージャーを殺し、
女を監禁。
ボクサーの男は、
彼女を助けようとするのだが・・・
当事者が殺されずに、
マネージャーが殺される描写はうまい。
また、望遠レンズを使っての、アパートの階段での追っかけっこも流石キューブリックというカメラアングルである。
前半のボクシングの肉弾戦と対比させたような、
たくさんのマネキン人形の中での戦いも絵的に面白い。
ようするに、この作品は、
キューブリックのカメラ技術に唸る作品であって、
後年の作品のように深く考える場面はない。
ただ、
この技術先行だったキューブリック監督は、次作『現金に体を張れ 』でセンセーショナルを起こし、作品を作るたびに、
時代の寵児になっていくのです。