萌える闘魂

ライアンの娘の萌える闘魂のレビュー・感想・評価

ライアンの娘(1970年製作の映画)
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海辺の寒村における不倫劇だからまさかスペクタクルは無いだろうと思っていたのだが、黒澤も真っ青な自然の猛威が大スクリーンにこれでもかと展開される。オリジナル脚本で寒村も大セットを組んで超純粋な映画世界を構築し恐らく徹底的な演技指導で住民になりきった役者陣がリーン監督的異世界で自由を得、放たれる。もう何というか何でもあり物語である。崇高なものから俗の極みまで豪華盛りの決定版といった趣。本来リアリズムを標榜していた筈のリーン監督のイメージが自らが生み出したこの世界観の中でジワジワ壊れていきます。もはやこれは現実なのか幻想なのか役者すら戸惑う不可思議な状況下で手狭霧で現実把握していくことが物語の軸になっていく。トンデモ女優マイルズは嗅覚で役をくみ取り好奇心という知性で世界に溶け込んでいく。もうこれは人では無い何者か或いは動物。この傍若無人で破天荒な振る舞いが、この物語を希有な嵐に巻き込んでいくだろう。撮影、音楽共に見事。70年代的映画としての有り様に於けるリーン監督の解答と投げかけが此処にある。ラスト、村を離れる二人の眼差しはふと『アラビアのロレンス』を思い起こさせる。