春とヒコーキ土岡哲朗

櫻の園の春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

櫻の園(1990年製作の映画)
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自分にとっての一回を、俯瞰せず生きる。

高校生、自分たちなりに大人。
『桐島、部活やめるってよ』と同じく、学校内のどうこうという大人から見たら狭いが、当人にとっては全てで、という状況。それを言い表す、演劇について「毎年の行事で自分たちの入学前だってやってて、ずっといる先生にとっては同じもの」というセリフが象徴的。
傍から見て他人もやってきたことでも、自分たちにとって一回きりの血の通ったものとして捉えている生徒たちの方が、生きていると言える。
もちろん高校生と大人で視野が違うのは事実。でも、そのとき自分たちに与えられている世界を全てとして生きるべきだし、大人だって世界が全て見えているわけじゃない。自分たちが力を尽くす機会を奪われたくないと願う演劇部たちの姿は、正しい若さ。

自分を出す場所。
しっかり者な部長だが校則違反でパーマを当ててきた清水、看板役者のプレッシャーに苦しむ倉田、タバコを吸った杉山。それぞれが、規律や他人に求められた理想に窮屈になりながら、自分を表現しようともがく。
全員が思い通りに大人になれるわけでなく、失敗や後悔を抱えて、それとの向き合い方で大人になる人もいる。