福福吉吉

華氏451の福福吉吉のレビュー・感想・評価

華氏451(1966年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
書物を所持し、読むことが禁止された社会、モンターグは書物を捜索し焼却する消防士の仕事に従事していた。ある日、モンターグは女性クラリスと偶然知り合ったことで書物に興味を持ち始める。やがて、モンターグは書物を読むことに夢中になり、消防士の仕事に嫌悪を抱き始める。

◆感想◆
思想が管理され、書物の禁じられた社会で、書物を取り締まる側の主人公が書物の魅力に取りつかれていく姿を描いた作品となっていて、独特の世界観の中で、主人公の変容ぶりとその周囲の冷徹さのギャップを強く感じました。

モンターグ(オスカー・ウェルナー)は書物を取り締まる消防士の仕事で出世が見込まれる優れた人物として描かれており、管理する社会側の人物でしたが、書物に熱意を持った女性クラリス(ジュリー・クリスティ)と出会ったことで、書物の内容に興味を始めます。書物を取り締まりながら、それまで書物の内容を知ろうともしなかったモンターグは社会に望まれる形の人物だったことがうかがえます。

モンターグの妻のリンダ(ジュリー・クリスティ)はモンターグと同じく、社会に支配されてテレビに虜にされる無気力な人物であり、クラリスと同じジュリー・クリスティが演じていることで、書物を読む人間と読まない人間の差を感じるように描かれていました。

書物に興味を持ち始めたモンターグは始めは隠れて書物を読んでいたのですが、次第に隠すことなく読むように変容していきます。それとともに消防士の仕事にも積極性がなくなり、書物を取り締まる意味を考え始めます。思想を管理する社会に完全に反旗を翻すモンターグの姿は本来あるべき人間の在り方を現していたと思います。

ストーリー終盤になると、モンターグと社会が完全に決別する形になりますが、その描写がなかなか衝撃的で架空の物語でありながら極端に行き過ぎた社会の末路を感じさせるものがありました。

独自の世界観をスマートに描き、観客に伝えたいメッセージをダイレクトに伝えている作品であり、製作者側の意図を掴みやすく、とても見やすい作品でした。ストーリー展開はやや遅めですが、その中でしっかり管理社会の歪さが描かれていて、最後まで退屈することなく楽しめるものになっていました。とても面白かったです。

鑑賞日:2024年3月22日
鑑賞方法:DVD
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