りょう

ジャッキー・ブラウンのりょうのレビュー・感想・評価

ジャッキー・ブラウン(1997年製作の映画)
4.2
 「パルプ・フィクション」と「キル・ビル」という“華やか”な作品に挟まれているせいか、よく言えば“渋い”、悪く言えば“地味”という印象の作品です。劇場公開された当時は20代半ばだったので、前作のような興奮を期待していたこともあって、ちょっと物足りなかった記憶があります。アフリカ系の中年女性が主人公という設定では、当時に流行る要素がなかったという背景もあります。
 これまで5回くらい観ていますが、自分が年齢を重ねるごとにいい作品になっているような錯覚があります。キーパーソンになっている保釈屋のマックスの年齢に近づいているからかもしれません。この役柄もかなり地味ですが、これまで15,000件の保釈をやってきたからか、犯罪者と対峙したときの冷静な態度が妙にカッコいいです。ロバート・デ・ニーロは、「ヒート」で強盗集団のリーダーをキレッキレに演じたばかりなのに、こんな冴えない銀行強盗犯に転落しているところが意味深くて面白いです。
 クエンティン・タランティーノ監督の作品にあるようなスピード感やバイオレンスがほとんどなく、かなりシックな雰囲気すらあります。終盤の展開に仕掛けがありますが、ほとんど奇抜な演出もなく、しかも恋愛の要素で締めくくるという異色作です。
 彼の初期の作品には、ポップ・ミュージックの大胆な使用という特徴がありますが、前2作と比較しても“使いかたがうまい”という意味では抜群です。音量やタイミング、選曲も含めて素晴らしいです。ポップ・ミュージックを大量に使用したがる〇ーティン・〇コセッシ監督は、この作品に見習ったらいいと思います。
 少し大人向きでポップな犯罪映画として、長尺ながら気軽に観られる秀作です。
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