初期のアッバス=キアロスタミの作品であり、とても好感が持てる映画であった。
当時は革命後で映画製作には規制が厳しかったようで、子供をキャストするならOKということで撮った映画であるが、それを逆手にとって大人の欺瞞をアイロニーを交えて少年の視線で私たちに伝えている。
ハタから見ても出演者の演技はあまり上手ではなく棒読みで、見ているこっちが顔を赤らめてしまうほどではあるが、ストーリーテリングの素晴らしさがそれを補っていた。
最初に鑑賞したのが「そして人生は続く」だったので、時系列が製作年だとこちらが古いので、この映画を鑑賞した事でやっと監督の伝えたい事が理解した気がする。
怖い教師、頑固な爺さん、言葉が通じない母親、あの時に感じた大人の身勝手な理不尽を子供の視点で上手に描いている。
前回のレビューでも書いた事だが、小津映画の影響が強い作品なのは理解できる。ジム・ジャームッシュも何気ない日常を撮っているが、どこか作為的な匂いがするのだが、この映画には人間味があり、主人公の親友のノートを持ってきてしまい四苦八苦する行動にユーモアを交えながらも子供の罪悪感からの不安な行動に細やかな演出力がみられた。
最後のカットでノートに挟まれた “ある物” に何も反応を示さないのであれば、教師と同様に私たちも子どもを苦しめる大人になってしまったのだろう。