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『ルシア』に投稿された感想・評価

Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

4.5
「ルシア」

〜最初に一言。若干26歳で手がけたキューバ映画の地位を固めたソラスの物語的天才を発揮した処女作にして最高傑作ここに極まれし〜

YouTubeで紹介してます。

https://youtu.be/1Q9CMwBP1xA

冒頭、1895年キューバ独立戦争の時代。馬車、コーヒー園、3人のルシア、スペイン兵、戦場の跡、狂気の女、死、丘の上の教会、廃屋、林の中、山道、別荘、海兵、葉巻工場。今、壮大な女の叙事詩が幕を開ける…本作はキューバ映画祭2009年で上映されたウンベルト・ソラス監督の160分の超大作で、1988年制作のキューバ映画である。この度、DVDを購入して初鑑賞したが素晴らしかった。この作品はキューバ革命直後の196X年を描いた3部構成オムニバスになっており、時代に翻弄されながら進化する女性を描いた長編大作と言うことで、日本でも当時話題になった作品である。3人のルシアと言う主人公を19世紀のキューバ独立戦争と1932年のマチャード独裁政権打倒革命を捉えたモノクロ映画だ。

どうやら、この作品は1969年にモスクワ国際映画祭で金賞を受賞しているようだ。そして謳い文句は"60年代のキューバが見える"との事だ。愛、革命、自立をテーマにした映画でもある。この作品が上映された理由の1つに1959年1月1日の革命勝利から50年目になるキューバ、そして日本とキューバ外交樹立が80周年と言う節目の時期だったのが2009年だったらしい。

その経緯があった為、一気にキューバ映画を連続上映したんだと思う。主にピックアップされたのが革命直後のキューバを描いた4作品で、そのうちの1つがこの作品である。当然ながらにキューバ映画などほとんど見たことがなく、今回初めてこの「ルシア」と言う作品を見たのだが、3人の女性の愛の姿を通して描く激動のキューバ反逆の歴史がとてつもなくダイナミックに、そしてワイルドに描かれていて非常に好みである。

監督は2008年になくなってしまっているらしく、長編処女作がこの作品である。この作品説明文にラテンアメリカ映画の金字塔的作品となっているが、言葉に疑いはなく本当にそんな感じがする程のカメラワークが卓越で、歴史的な転換期にあるキューバをここまで再現しているのは非常に凄い。というのもこの作品を見る前に革命直後のキューバ(キューバ危機からピッグス湾事件、米国の経済制裁やハバナの空爆、カストロの社会主義革命やチェ・ゲバラの物語など少し色々と調べた結果非常に楽しく鑑賞ができた)。


まず、物語を語る前に知っておいてほしい事柄がありそれを話す。この作品はスペイン支配下の第1話、アメリカの影響が強まる第2話、革命後の喜びが蔓延する第3話と分かれている。そうした中、16世紀から19世紀末までスペインの植民地化にあったキューバの半植民地的独裁政治に苦しんだ時期の歴史を民族としての自由と自立を求める3つの時代に生きた3人の女性ルシアの愛と革命を通じて描き出す物語である。さて、物語は1895年のキューバ、1932年のキューバ、196X年のキューバと3つのストーリー構成になる。


第1話"1895年キューバ独立戦争の時代"

1868年の第一次独立戦争に続いて、この年ホセ・マルティらによる第2次独立戦争が起きた。キューバの植民地支配者のスペインは兵隊を動員して愛国者は残酷に弾圧する。キューバ人は裕福な層も含め独立戦争に協力し、ルシア一家も豊かな家庭だったが、弟のフェリーペは独立軍に参加、一家は独立軍支援の活動を続ける…と簡単に説明するとこんな感じで、スペインからの独立戦争で揺れるキューバを映している。自分の周囲が結婚をしていく中、裕福な家庭に生まれた女性(ルシア)には男が存在しない。彼女の弟が参加するキューバ独立派を支援するべく、女友達と縫い物をする日々が彼女にとってのルーティンワークの1つである。そんな時に、スペインから来たばかりの実業家ラファエルと言う男性と出会って彼女は恋に落ちていく。ところが、その男には企みがある…ってのが第1ストーリーの話である。

まず、この第1話の最大の見所はあまり広く言及してしまうとネタバレになるから短く話すが、スペイン軍と独立軍の凄まじい死闘が展開する場面があるのだが、そこが黒澤明監督の「七人の侍」を彷仏とさせる場面である。その場面のクオリティの高さは凄すぎる。若干26歳でこの作品を撮り上げた監督は偉大である。そして狂人になっていく彼女(ルシア)の姿もとんでもない芝居力だ。あのコーヒー園のシークエンスは印象深い。それにイタリアのネオリアリズムを放彷彿とさせるドキュメンタリータッチで描かれている。それにやはり凄いのは独立軍とスペイン軍の戦いを手持ちカメラの臨場感で撮影したエレアのカメラの動きだろう。

第2話"1932年マチャード独裁の時代"

キューバは1902年に独立した。しかし、アメリカにて従属する半植民地的な独裁政権が続く。1928年、マチャードへの抵抗運動が始まる。ブルジョワ家庭に育ったルシアは母とともに小島の別荘に行った時に、革命運動に没頭する若者アルドと知り合う…と簡単に説明するとこんな感じで、マチャード独裁政権下で両親の不和に嫌気をさしたブルジョア家庭の娘を基軸に物語が淡々と進んでいくのだが、途中から激しいカメラワーク(デモ行進や暴動)がある。その娘こそ第2のルシアである。彼女は恋人のアルドともに革命運動に身を投じマチャード政権を打倒する。ところがその後に米国支配が起こってしまう。そして資本主義に満ちた社会がこの国に出現し、頼りにしていた同士たちが次々と自堕落な生活に転落していくのを見て嘆き悲しむ。そうした中、恋人のアルドは再び革命を起こそうとする…と言うのが第2ストーリーである。

この第2話では「アルジェの戦い」の如く民衆の蜂起的な姿が映り込み、反マチャードのデモに参加する人々の反発と警察官との銃撃戦、独裁政権が倒れても次の政権もやはり腐敗した政治家たち…そういったカオス的状況の世界で行われる意思を継ぐ決意がすごい描写で畳み掛けてくる。


第3話"196X年ー革命後の時代"

1959年1月1日、独裁的バチスタが逃亡し、カストロらの革命が成功する。農村にも農業協同組合が作られ、農婦たちの陽気な笑顔が溢れる。そん中、ルシアとトマスと言う新夫婦がいる。夫はトラックの運転手で革命信者だ。女性に対する考え方が保守的である。嫉妬深く、ルシアが男と話しただけで憤慨する。彼女が働きたいと言った途端に自分の家に閉じ込めてしまう始末である…と簡単に説明するとこんな感じで、この物語には救いと幸せが最後に我々に贈呈される。

キューバ革命直後の田舎町を舞台に農村出身のルシアとトマスとの結婚を基軸に、キューバのために働こうとする2人が描かれている。だが、夫は保守派で今で言う古い考え方の人間である為に、妻を家の中に閉じ込めてしまう…と言うのもハバナから教師職の為にやってきた若い男との浮気を疑ってしまう事によるものだが。それに癇癪を起こして暴れてしまう夫。それに嫌気を差した妻ルシアは家を出て行ってしまい、トマスと浜辺で半ば取っ組み合いの対決をする。そういった綺麗な描写から残酷な描写まで流れるキューバの有名な曲"グアンタナメラ"がバックに響き渡り、観客は居心地良さを感じる…これがすべてのパートである。

それにしてもこの第3話の内容を見る限り、当時のキューバでは文盲の女性が多くいたんだなぁと思わされた。それで小さな農村に現役教師が動員され、字を教えると言う場面がすごく印象に残るものである。全体的に3話は物静かな作風でとられているが、ものすごく印象に残る演出が多くある。1番男女差別を描いている。

もちろんキューバの役者なんて名前も知らないし、ほとんど知らないのだが、この作品に出てる役者は全員素晴らしい芝居をしていたと個人的には思う。それにダイナミックでワイルドなカメラワークをとった撮影者であるホルヘ・エレーラと恐ろしい音楽を鳴り響かせたレオ・ブローウェルの音楽は特に良かった。





キューバのウンベルト・ソラス監督が、三つの異なる時代を背景に“ルシア”という名前の三人の女性を描くオムニバス風作品。最初は、スペイン軍と革命軍の抗争が激化する1895年を舞台に、男に裏切られて狂気に走る女、ルシア。続く1932年は、革命が成功した後の労働者たちの姿をルシアを通して見つめ、最後の196X年では、解放後のとある農村で懸命に生きる一組の夫婦の姿を描く。



あの冒頭で、富裕層の品のある女性たちが現れるシーンから数分して一気に地獄絵図のような路地裏の腐敗した場所で男と女が狂い始めていく描写は凄まじいインパクトがある。男は女に悪魔を産めなど言って、女はスペイン万歳とひたすら言う。その描写がものすごい厭世的な気分にさせる。それに音楽も不気味で凄く映像にマッチしている。その後に哀れな修道女たちが叫ぶ場面(叫び声は聞こえない演出)や爆風で煙が立つ一面焼け野原のシーンでの強姦、それと富裕層の女性たちとのカットバックも凄い演出だ。


それに複数の男が女を囲んで初な女(うぶ)って言いながらぐるぐる回る画もイカれちまってる。

それになんといってもキューバ版の「七人の侍」を見ているかのような馬の大群を押し寄せて大きな大草原で戦う兵士たちの描写は凄まじい迫力がある。大量の火薬を使い、巨大な空間の中をカットバックしていき、1人の女性を幾たびも画面に登場させ、絶望的な死体の山、それまで戦っていた男たちの(愛しの人)の死体を発見して泣き崩れる女、ついに怒り始める女が家の中で頭がおかしくなったように動き回ったり、生き残った男なのだろうか…その男が女に向かっていく場面やナイフで刺し殺し、池の中に入り溺れさせて水を浴びながら戦ったり、ミイラのような叔母さんが現れたり、とにもかくにも迫力のある映像のオンパレードで俺は大好きな映画だ。


キューバの民族楽器のような音楽と共に十字架を手に持って行進する場面やそこにルシアの慌ただしい姿が映り込む…そしたらまたここでも残虐極まりない出来事が不意に訪れる。観客はいちいち驚かされてしまう。そうした中、時代は1932年と移り変わり、2人目のルシアの物語が始まる。


マチャド反対と言う女性のデモ軍団の迫力ある街中の描写や教室でのダンスの情熱さ、いきなり舞台の上で銃撃戦が始まり、泣きわめく女性のクローズアップ、そしてそこから徐々に"団結せよ"と言う女性デモ軍団の大暴動へと発展する流れは最高である。馬に乗った警察が女性を棍棒でぶったたいて血まみれになって地面に倒れこむ女の描写や、車にしがみつく男、ひっきりなしに流れる心を乱す音楽、手をつなぎながら走って逃げようとする女性たちの姿など、とにもかくにも凄いものを見せられてる感が半端ない。そして物語は最終章の196X年になる。

肉体のいい女性と結婚した男が、街の公共の場で知らない男と踊ったその女性(妻)を夫が家の中に閉じ込めちゃうし、一種のホラー映画だ。と言うのも内側から釘で全部の隙間を板でふさいで、家から出さないようにしているのだ。

それに集会で年配の女性が"同志諸君"と叫びながら力強い演説をする姿も迫力がある。このラテン特有の騒がしくてテンションが高い笑い声や情熱的な性行為等が凄く文化的で歴史ある建物などの描写も良い。それにしても夫から逃げた妻を追いかける夫の狂気じみた行動はすごいし、皮肉った歌も非常に笑えてしまう(物語は非常にシリアスなのに)。この辺はやっぱりラテンチックなノリがあるのだろう。


2人の夫婦が浜辺で大喧嘩するところで、妻は夫に対して、暴力を振るわないでほしいと頼み、私は働くと言うのに旦那は俺の言うことを全て聞け俺が絶対だ的なことを言うのが、今の時代じゃ考えられないので当時ってスゲェなぁと思う。でもその夫婦の喧嘩を遠くから覗き見している可愛らしい少女の笑顔でクライマックスを迎えるシーンはこの地獄のような第一部と第二部そして第三部を通して見てきた我々観客に唯一の救いを与えてくれる帰結であった。

その少女の存在は果てしなく大きくて、女性の解放を暗示させる唯一のシークエンスである。

この作品、Filmarksの総合評価が3代なのが不思議だし、案外みんな辛辣な評価してるなと思うけど(俺も超辛辣派だけど)この作品に限っては非常に良かったと思う。特に女性3人を焦点にして当てている中に男性とのドラマをクローズアップしている点も非常に面白いし、何よりもオムニバス形式と言うキューバ映画が新鮮である。



それにしても17歳で革命を迎えたキューバ映画の第2世代で、革命後に育った映画人であるソラスが、これほどまでに壮大な映画を作り上げたことに拍手喝采を贈りたい。この作品は彼が当時26歳と言う若さで撮りあげたたと言う2時間40分の大作で、色々とこの作品を調べると面白いことが出てくる。まず第1話の大群衆シーンでは2台のカメラしか使っていないらしく、撮り直しは1回限りと言うフィルムの制約もあったらしい.それを聞いてしまうと、あの映像を作ったのは奇跡もしくは彼の力量のどちらかしかない。

そして先ほども述べたが、第1話のシーンでは黒澤明の「七人の侍」を彷仏とさせると言ったが、彼が尊敬している監督の中に黒澤の名前もあって、1970年の大阪万博国際映画祭で本作が上映された際には来日したそうだ。これで全て納得がいく。ちなみに第2話はベネチア国際映画祭最高賞金獅子賞受賞したジッロ・ポンテコルヴォ監督の「アルジェの戦い」に影響していると見られる。実際アルジェは66年製作で「ルシア」は68年だし、彼が観てない訳がない。



感受性と文化的表現と政治的意識の中にあるユーモア、これが本作には全てあり、私の嫌いなフェミニズム的要素が目立つが、この作品に於いては素晴らしいフェミニスト的3部作に仕上がっていると思う。これは最も絶賛し、称賛に与えするキューバ映画、ラテンアメリカ映画である。そりゃ、そうだろう…今現在流行中のラブストーリー映画とは訳が違う。この作品の3つの時代に生きる3人の女性ルシアのラブストーリーも描かれているが、社会的、政治的文脈の中で生き生きと描かれている訳で、革命後のキューバ社会の女性の立ち位置の変化を如実に表しているからだ。

それを26歳で撮りあげ、尚且つ主演女優3人の演技指導をここまで完璧にしたとは…最早敬服だ。もちろん、まだまだ知らない監督、名前は知っていても見た事ないキューバ、ブラジル映画は山の様にあるが、今のところ私はルシアをラテンアメリカ映画のセンターとして、その地位を大切にさせたいし、高めたい。そんな想いでいる。


この「ルシア」はかなりオススメなので、ぜひ見てほしい。女は狂い、男は死ぬ。だが独立の歴史は消えない。私は象徴される人物だ。キューバ人の独立戦争、そしてスペイン植民地時代のキューバを私はこの悲劇を通して生きた女である…。

あぁ、、傑作。

最後にDVDの特典として監督自身の短編MVが入っていたので、そちらにも言及しておく。このFilmarksにはどうやら入っていない作品のようなので。

「オバタレオ」

この作品はロマンチックな音楽とともに大海原が写し出され、そこに大型船、漁師などが映り込む。そしてスペイン語で歌が始まり、数十人の男たちが船から降りてくる。これはどうやらミュージックビデオのようだ。3分ぐらい音楽が流れた後に、違う男性がカメラに向かって語り始める。そしてまた音楽が鳴り始まり、子供たちが家に青と赤の布を持ち(キューバの旗カラーだと思われる)中には黄色の布のを持っている。そしてみんなで踊る。フルックロールと言う文化音楽を(伝統音楽)を研究し、自らの根源にしたアフリカ音楽とは違うタヒチの踊りらしい。

そしてカメラは民族楽器の太鼓を映し出し、カメラに向かって語っていた男の人がマイクで歌い始める。そして街は人々が集まり盛大に踊り始める。そしてこの集団の踊り子たちは街から海岸沿いの広い広場に移動し、ひたすら布を手に持ち振りながら踊るのである。

これ僅か10分ちょいの短編なのだが、非常に私好みである。音楽が素晴らしかった。
No.501[三人のルシアが見つめたキューバの近代史、三つの短編の継ぎ接ぎ映画] 50点

ルシアはラテン語の”光”という意味から来ているらしい。あまり光を感じることのない結構陰惨な話だが、第一部のエネルギーが凄まじかっただけに残りが…

第一部、1895年キューバ独立戦争(スペインからの独立戦争)
裕福な家庭に生まれたルシアはスペイン人実業家ラファエルと恋に落ち婚約するが、ラファエルにはスペインに妻子がいた。一時はルシアも塞ぎ込むが、ラファエルに愛を告白され頭がいっぱいに。コーヒー農園にふたりで逃げることにするが、ラファエルはスペイン軍を連れてきており、コーヒー農園を本部とするレジスタンスと戦闘になる。弟のフェリペが亡くなる。発狂したルシアは広場で逃げ帰ったラファエルを刺殺し、虚無に堕ちる。

劇中に登場する狂女フェルナンディーナのビジュアルが強烈だが、彼女とルシアが対比の関係に置かれているのが面白い。双方ともにダンスシーンや戦場でのシーンが用意されており、戦場で狂ってしまうのまで共通している。キューバ人の中でもブルジョワと貧民が分かれており、その後のブルジョワから闘士になる第二部ルシアと農村出身の自立したい第三部ルシアに繋げる対比構造と見るべきだろう。

引きの固定ショットがカッコよく、近接ショットも煽情的でワイルドすぎる。カメラワークが非常に流麗で美しい。静と動の映像によって感情の波が押し寄せてくる感覚は他では味わえないだろう。途方もないエネルギーを持った映画であることを認識させられる。


第二部、1932年 マチャード独裁政権打倒革命
ブルジョワ両親の不和に嫌気が差したルシアは恋人アルドと共にマチャード独裁政権打倒革命に参加し成功させる。しかし、アメリカの参入によって多くの同志たちが資本主義と自堕落な生活に堕ち、アルドは再び革命を起こそうとする。しかし、それは自堕落な生活を享受する人々には邪魔でしかなく、孤独の闘争の末亡くなる。アルドとの子供を妊娠していたルシアは途方に暮れる。

第二部は打って変わって感情の起伏が少なく、静かな映像が多い。ただ、それでもデモ行進のシーンでは第一部の戦闘シーンに匹敵するほど煽情的で驚く。第一部で一方的に攻めたのがスペインだったのに対し、今回はキューバ政府になっているのが時代の転換を感じる。第一部はスペインが悪でキューバが正しいという二元論的時代だったが、第二部ではキューバ人の中で割れ始めているという歴史の流れを確認できるだろう。マチャードの悪行やアメリカの流入は直接描かれていないものの、両者ともにキューバの市井の人々に悪影響を及ぼしたことは火を見るよりも明らかだ。

ルシアを演じるエスリンダ・ヌニェスが可愛い、誰かに似ている気がする。誰だっけ?


第三部、196x年 キューバ革命直後
農村に生まれたルシアは社会主義国となったキューバのために働こうとするも、考え方の古い新婚の夫トマスに阻まれる。トマスは知らない男と踊ったと言ってルシアを家に閉じ込め、革命政府が送った読み書きの教師まで拒絶しかける。狂ったようにルシアに近付く男たちを攻撃したトマスに嫌気が差したルシアは家を出ることにする。

第三部になると、これまでの熱狂が嘘のようになる。カビの生えた考えを持った男が妻を奴隷のように自宅に閉じ込め妻が家を出てしまう、という当時にしては先進的な”女性の自立”を謳った部になっているのだが、話題も唐突だしトマスが只管ウザイ。尻すぼみとはまさにこのことだろう。


三部構成になっている意味はよく分からない。それぞれの部の系譜は続いておらず、何かが継承されているわけでもない。例えば、作中トマスは”それは祖父の代の考え方だ”と言われるが、祖父の代にあたる第二部では妻を奴隷にする描写などなかった。現に第二部ルシアは働いていた。それぞれを切り離せばもっといい映画になったのでは。また、最初にコンセプトを聞いた時、「灼熱」みたいな”同じ人物が別時代のルシアを演じる”系か「イントレランス」みたいに”三人のルシアのクロスオーバー”系かと思ったら堅実に頭から攻めていた。短編映画を三つ繋いだ感じになってしまっているのは残念だった。

ルシアたちが時代を経て手に入れたものは何だったのか?三人のルシアは平等に愛を失い、必ず冒頭より悪い環境に陥っている。ソラスが何を言いたいか定かではないが、私は何も得られなかった。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

2.8
【『灼熱』と比べると、、、】
キューバに行くぜ!と語ったら、映画仲間が、「こんなキューバ映画を知ってるかい?」と貸してくれた。

キューバ史を3つのポイントで描いたオムニバス映画だ。全て、ルシアという女性の立場から描かれている。時間も160分と超大作だ。

うーむ。この手の話は何年か前にクロアチア映画『灼熱』で衝撃を受けていただけに、構成の下手さが目立つ。

第一部で、激しい戦争描写、キューバ創世記の激動を《狂女》にメタファーとして背負わせる描写こそ、1960年代後半の抑圧、波乱、革命の時代ならではの力を感じたのだが、第二部、第三部でトーンダウン。あれだけキレッキレのショットも希薄となり、この断絶によってメッセージ性や軸がぶれてしまっている。オムニバス映画としては致命的な、「1本で十分ですよ」感が否めない作品だった。

ただ、それでも第一部は、まるでアンジェイ・ズラウスキーのような観客の魂まで奪う魅力に溢れていた。キューバ史を勉強しないとわかりにくい部分はあれど、第一部、第一部だけは必見だ!

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