萌える闘魂

アラビアのロレンスの萌える闘魂のレビュー・感想・評価

アラビアのロレンス(1962年製作の映画)
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当時1200万ドル前後の制作費が投入された大作。ドラマの背後にある砂漠の捉え方はリーン監督の独自の美意識が遺憾なく発揮されていて妖艶ですらある。その妖艶さはオトゥールの表情とシンクロしリアリズムにある種の官能性を纏わせドラマに史劇性を与え時間軸を巻き戻している。本作が回想形式を取っているのはそのような理由によるものである。軍用列車の脱線転覆や大オープンセットで再現したアカバの街を砂漠から奇襲するスペクタクルな場面も面白いが、ロレンスという個の描き方も繊細で長編ではあるがドラマ全体を引き締めている点にも注目していただきたい。70ミリカメラで捉えた砂漠そのものが、一種のスペクタクルでまるで砂の一粒一粒に焦点が合っているような精緻な肌触りは滅多にお目にかかれる物では無いだろう。砂嵐は合成であるが当時の最先端の特殊効果が功を奏している。何故か後半に雪が舞うがこれは次回作『ドクトル・ジバゴ』を遙かに予告しているかのようだ。ラスト主人公の無言のまなざしがいつまでも記憶に強く残る。