KnightsofOdessa

クワイエット・ルームのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

クワイエット・ルーム(1996年製作の映画)
3.0
[喧嘩する両親を見て沈黙を選んだ少女の物語] 60点

1996年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ロルフ・デ・ヒーア長編五作目。喧嘩ばかりする両親を見て、3歳から話すことを止めた少女は、そのまま7歳になった。映画はそんな彼女のナレーションによって進められる。生活の様々な場面を無言で切り抜けながら、その裏で思っていることをコメンタリーのように足していくのだ。子供ながらの語彙力の少なさと状況把握経験の乏しさから、3歳の頃を思い返すナレーションの時制が現在時制になっていたり、田舎なら皆で仲良く暮らせるという自分の理想を何十枚も同じ絵にして描いてみたりしていて、自分に見える小さな世界を自分の物差しで捉えようとしているのが分かる。語彙力が少ないといえば前作『悪い子バビー』の主人公バビーと似たような状況だが、バビーが他者の言動をコピーすることで語彙力を得ていったのに対して、本作品では語彙力そのものは変わらないものの、その発露先を絵や動物を媒介とすることで、様々な映像表現へと昇華している(母親の言動をコピーして"気に入らないだろ?"とやり返す風刺みたいなシーンはある)。とはいえ、これも『悪い子バビー』と同様に、基本的にやってることが全部同じことの繰り返しなので、流石に退屈が勝つ。それよりも、人生の半分以上喋ってないこととか、壁中同じ絵で埋め尽くすことに疑問を持たない両親の方がヤバいと思う。これまでの作品と同様、ラストは潜在的な夢が叶えられるのだが、本作品はデビュー作『ヒコーキ野郎 / スカイ・キッド』と同じく早い段階でラストの方向性が提示される。共通点は主人公が子供ということか。大人たちの潜在的な夢が言葉と違う中で、子供は自身の夢について自覚的なのかもしれないと思うなど。
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