"鬱映画"という評判は聞いていたけれど、同時に高く評価されているのが気になって観た作品。確かに救いようがないし、こんなにも人間不信になる話って無いと思う。空想のシーンも多くて誰が盗みをしたのか厳密には分からないところも、なんだか含みがあってひどく混乱してしまう。それでも、自身も辛いはずなのに常に他の誰かへの思いやりを見せる主人公の姿はとても素敵だったし、暗くて残酷なシーンを観る時よりも、そんな現実から切り離されたミュージカルの世界が立ち現れる瞬間の方が、主人公の安堵と束の間の幸せが一気に押し寄せてくるようで心が震えた。
ある問題について、観る人に考えさせる映画はたくさんあると思うけれど、これほど印象的で、深く訴えかけてくるようなラストは今まで経験したことがなかった。観て良かった。
