てつこてつ

サイコのてつこてつのレビュー・感想・評価

サイコ(1960年製作の映画)
4.5
NHKBS4Kで放送していたものを録画していたので約30年ぶりに再鑑賞。

アメリカ映画界のスリラー・サスペンスの分野において非常に重要な役割を担ったアルフレッド・ヒッチコック監督作品の中でも異例に・・というか、唯一無二のホラー寄りの作品。原作物でオリジナル小説も読んではいるが、ヒッチコック監督の映像化によってこそ命が吹き込まれた作品。

モノクロ作品に対して言うのもおかしな話だが、いやはや、全く色褪せない。1960年製作映画なのでとっくにカラー映画時代が到来していたのだがヒッチコック監督が敢えてモノクロで撮影したのも、こうして再鑑賞してみると、クライマックスの地下室のシーンを筆頭に、夜のモーテルや屋敷内のシーンなど登場人物の影や陰影(猛禽類の剥製がノーマンの顔に落とす影の意味深さよ!)を非常に効果的に使う撮影手法が多様されている。本作では有名なシャワーシーンや階段での殺人での斬新なカメラワークが取り上げがちだが、地味ながらもモノクロ撮影の意義も再発見できたのは個人的には大きな収穫。

また、バーナード・ハーマンの耳に残る音楽が非常に効果的。これだけ音楽が印象に残るヒッチコック作品も珍しい。

ロサンゼルスのユニバーサル・スタジオに建てられたベイツ・モーテルと階段を上った丘に建つ禍々しい屋敷の雰囲気も最高。

ヒロインが序盤で替わるという意表を突いた展開や、本作のオチは今でこそ珍しくはないが、公開当時は相当世間をざわつかせただろうな。タイトルのPsychoという英語も“イカれた奴”“(精神的に)ヤバい奴”という意味合いで使われるようになったのも確か本作がきっかけであったと記憶している。

アンソニー・パーキンスは、本作出演までは青春スターとしてその名を馳せていたというから、このキャスティングも見事だし、本作の強烈なキャラクターのイメージのせいで、その後のキャリアに影響が出てしまったというのも大いに納得。

今回の再鑑賞で恥ずかしながら初めて気づいたのは、ブライアン・デ・パルマ監督作品の中でも一番好きな「殺しのドレス」が明らかに本作へのオマージュ作であったこと。まさに灯台下暗し。
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