都麦

男はつらいよの都麦のレビュー・感想・評価

男はつらいよ(1969年製作の映画)
4.3
バカのブス。いやブスのバカ。知性のカケラも感じられないおっぺけペーのロクデナシ。現実にいたらめっちゃ嫌いなタイプ。しっかし終わった頃にこの男を好きになっていた俺がいた。なんだこれは。なんだこの作品は。

俺の中の永遠の三枚目ヒーローはルパン三世だったが、今日その地位が揺らぎ始めた。車寅次郎。こいつはなんなんだ本当に。

ひろしとの口論あたりから、明確にこの人を憎めなくなっていた(最初マジで嫌いだった)。この人には理屈も論理もありゃしない。ただ、さくらと冬子だけには心底優しい。終いには登を故郷へ向かわせようと殴り、泣き、ラーメンを啜り、ほんで登を添い遂げさせ続けたときたらこれはもう男の中の男。

バーでアイ・ラブ・ユーを説教してるときの、隣の聞き耳立ててるカップルが一番「モノを言う」目だったこと、自分の耳を疑った「さくら、まくら取ってくれ」、そして「バカだねえ全く、ほんっとバカだよあいつは」のヘビロテ。登の不憫っぷり、ヒロシの父親の名前を誰も読めないこと、ドリフの如く破れる袴。細かい芸がすごいよ。

なんだよぉまったく。ほんっとなんだよぉこれは。

こうして伝説のシリーズについに手を出し始めたわけだが、初手、桜の花びらと葛飾のだだっ広い土手、あの音楽と、満を持してのタイトルイン。名作を、観た。名作を観ました。

今回のヒロイン冬子だが、こういうずるい女に完敗した数だけ男は強くなると思う。
都麦

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