荒澤龍

灼熱の魂の荒澤龍のネタバレレビュー・内容・結末

灼熱の魂(2010年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

・母の遺言をきっかけにまだ見ぬ父と兄を探すことになった双子のストーリー。
・母の突然の精神疾患の原因と遺言の意図が明らかになった時、驚嘆する。

〈考察〉
・タイトル「灼熱の魂」とは精神疾患で死んだようになった母の中に残る父と兄への燃えるような復讐心と愛情のことではないか。
・双子によって遺言の内容が達成された時、双子と父、兄に真実を伝えられると同時に魂が成仏でき、母の中で「墓に名前を刻む」ことができると考えたのではないか。
・プールサイドが何度か出てくるが場面の切り替え、登場人物の心の整理だけでなく、父、兄を見つけるきっかけとして重要であったと分かった時演出の上手さを感じた。
・冒頭の子供が丸刈りにされるシーンと刺さるような眼差しの意味も最終的にわかる。
・最後の真実が明らかになる瞬間以外にも、バスが燃えるシーンや監獄のシーンなと衝撃的な場面が散りばめられているため長い映画も鑑賞に耐えうる。
・登場人物にトレードマークがあり(双子であること、十字架のペンダント、足の傷など)場面や時間が切り替わっても鑑賞者が追いやすいように工夫されていると同時に、それが物語上重要であるというDouble meaningである。

〈疑問〉
・母に命を受けた双子は真実を明らかにするが、双子にとってその真実は強烈に自己を揺さぶる内容であることは母も理解していたはず。母の復讐の為に利用される形になった子供に対する謝罪の言葉が遺言では全く述べられていないのが気になった。精神疾患で死期が迫っていたためにそんな余裕がなかったという解釈か、もしくは双子の出自から実は心の底から愛すことが出来ていなかったのかもしれない。その証拠に子供の片方は母を「変わっていた」と表現し、歪んだ愛情を示している。もしくは双子の感情が母の愛情と憎しみという二律背反の気持ちを象徴的に示しているのかもしれない。

・遺言はいつのタイミングで書いたのか。精神疾患で茫然自失となった状態で書いたことになるがそれでは映画の描写と矛盾する。
荒澤龍

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