寝木裕和

日本橋の寝木裕和のレビュー・感想・評価

日本橋(1956年製作の映画)
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大正期のお江戸日本橋。
そこでの芸者二人×贔屓客二人の、火花を散らす色恋の攻防。
… と書くと、猥雑で騒がしいイメージが湧きそうだが、市川崑監督はわりと淡々と描いている。

未読なのだが、原作・泉鏡花ということなので、おそらく元の方はもっと幻想的で、泉鏡花流マジックリアリズムな世界観で描かれていたのではないかと想像する。(例えば、『歌行灯』などでも見られるような。)泉鏡花特有のあの世界観を映画で再現するのは相当難しかったであろう。(実際、脚本を務めた戸田夏十は初めその依頼を私には無理だ、と言って断ったのだとか。)

それでも、主役:お孝とライバル:清葉を演じた淡島千景と山本富士子の存在感が際立っており、この二人によってこの作品の質がぐっと上がっている。

こういう凄みのある役者は、現在どれほど存在するだろうか。
寝木裕和

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