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戦場にかける橋のMaoryu002のレビュー・感想・評価

戦場にかける橋(1957年製作の映画)
4.2
巨匠デヴィッド・リーン監督による壮大な戦争映画。
戦争映画と言っても、主に捕虜収容所での出来事を描いている。

第二次世界大戦中、タイの日本軍捕虜収容所で橋の建設を目的にイギリス軍捕虜が集められる。隊長のニコルソン大佐は兵士の士気と尊厳のために橋の建設に真剣に力を注ぐ。一方で収容所を脱走したアメリカ兵シアーズを含むイギリスの特別部隊はその爆破を目的に橋に近づいていく。

この映画は不思議なことに、単純な日本軍と連合軍の戦いではなく、敵と味方が複雑に入れ替わり、「国」を超えた「主義」で動く人々の話になっていく。
だから途中から日本軍と捕虜は良好な関係となり、ニコルソンと斎藤には友情らしき関係も生まれている。さらにニコルソンは友軍であるはずのウォーデン、シアーズ、ジョイスの前に立ちはだかる。
それは、単純な戦争映画を観慣れている我々には新鮮だし、この映画の描くテーマに徐々に近づけてくれる。
戦いを単純な敵味方、善悪で区分しないあたりは、同監督の「アラビアのロレンス」と似た作りにも思えた。

橋を完成させたニコルソンは28年の軍隊生活を振り返り、斎藤に「私は自分に聞く。私の存在が何かにとって少しでも意義があったか。しかし今夜、やっと。」と、橋に自分の人生の意義を見出すが、実はイギリス軍人としては敵国のための仕事をしていることに気付く。
そして結局、自分の人生でやっと作り上げた建造物を自ら壊すことになる。
そこには戦争の無残さ、人間の内面を壊してしまう残酷さだけが残ったように感じた。
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