“どうしてそんなに活き活きしているの?”
大好きな西川美和監督作品なのに
何故かタイミングを逃して観ていなかった長編デビュー作。
開幕から終焉まで“西川節”が詰まりまくってる。
人間の“黒い部分”を描くことに特段長けている西川監督らしさが随所に描かれている上、とにかく繊細な伏線描写や比喩的なシーンがばら撒かれている為、一度観た時と二度目三度目と再鑑賞した時では間違いなく感じ方が変わるでしょうなとわかる初見だった。
後の同監督作品群で言えば、本作は【ゆれる】や【ディア・ドクター】に近いかな。
普遍的なある家族の日常シーンから始まるその時点で、親近感や既視感、そしてリアリティ溢れる他愛もない言動のアレコレが、「あぁ〜、西川監督らしいなぁ」となる。
何気なく、そして結構のっぺりと続く家族に起こるひと騒動が主軸なので、ボケ〜っと観てると眠くなる人も出てくる?
そんな淡々とした一連のひと騒動の中の、父であり、母であり、妹であり、兄であり、そして祖父の言動そのものに、人生の奥深い“明と暗”“光と闇”“真実と事実”“善と悪”が押し付けがましくなく、よもすれば気づかないレベルで描かれているものだから目が離せないし気が抜けない。
何でもなさそうな口笛のシーン
作品を観終わって、
エンドロールの最後の方でハッとする!!
巧い!
本当にデビュー作?と疑うほどに巧すぎる演出とエッジの利かせ方だ。
このシーケンスに耳を傾けて、目をこじらせて、気を張って観てみると、鑑賞側全振りのラストシーンがじわじわと沁みてくるし考察に及ばぬ“答え”が見えてくる。
正義と悪とは?
真実と事実とは?
正直と嘘とは?
信用と信頼とは?
見栄と素直とは?
そして 家族とは? 愛とは?
ずっと
こんなことを自分に問われているような気分になる邦画的ヒューマンドラマ。
“あなたの言うことはいつでも正しいんでしょ、はいはい。”