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ゼイリブのsymaxのレビュー・感想・評価

ゼイリブ(1988年製作の映画)
3.7
…OBEY…

世は超不況…仕事にあぶれる人々がいる一方で、TVや新聞・雑誌では購買意欲を刺激する下世話な宣伝ばかり…貧富の格差は益々広がっていました。

今日も仕事を探すネイダ…役所はアテにならず、あちこち探し回りようやく建設現場での仕事にありつき、そこで出会った妻子を残して出稼ぎに出ているフランクから、まるで難民キャンプのようなドヤを紹介してもらい、落ち着ける場所にたどり着いたネイダ。

ボランティアで炊き出しをしている教会からは、四六時中、讃美歌が響き渡り、妙な連中の行き来があるのに違和感を感じていたネイダが教会で見つけたものは、幾つもの"サングラス"…掛けて見える光景に驚愕するネイダ…そこに映るのは…

"ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022"二本目…強烈な社会風刺の効いた、これもまたカルトなB級SFにして、史上最高なプロレス映画…

ジョン・カーペンター監督作品は、どの作品もタイトルの出方が非常にカッコいいのですが、本作は際立ってカッコいいんです。

ハーモニカを効かせたカーペンター特有の曲調と共に現れる"They Live"の文字が、やがて壁の落書きの一部となり、ロディ・パイパーの歩く姿へとカメラが移動する…なんとカッコいい…

私の記憶に間違いがなければ、カーペンター監督作品のタイトルは、必ず頭に"JOHN CARPENTER'S"と自分の名前を付けているはずです。

これって、結構勇気ある行動で、自分の作品に対して絶対の自信と責任を持っている事の現れだと思います…私がカーペンターを尊敬する理由の一つです。

さて、本作はSFという舞台で、資本主義の暴走や特権階級による支配等を痛烈に風刺した作品ではありますが、その社会に対して極端な正義を盲信し、暴力で対抗する事に関しても批判しているようにも思えます。

主役のネイダの"見て知ったから即殺す!"という行動には共感はできませんし、自分が貧乏なのも、親から暴力を受けたのも、みーんな宇宙人のせいにして、疑問を抱かない心理には恐怖しか感じません。

支配側、抵抗する側、どちらも正しく、どちらも間違っている…どう捉えるかは、作品を観た観客一人一人が判断すべきと言っているようにも見えてくる…思った以上に本作の奥にあるテーマは深い…それをB級SFでサラッと作ってしまうカーペンター…凄い…
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