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霊魂の不滅のbennoのレビュー・感想・評価

霊魂の不滅(1920年製作の映画)
3.9
スウェーデン映画の巨匠ヴィクトル・シェストレム監督作品…原作はノーベル賞作家セルマ・ラーゲレーヴの『幻の馬車』…。

イングマール・ベルイマンに多大な影響を与えたと言われるシェストレム…今作では監督・脚本・主演を務めています…。また、ベルイマンの『野いちご』では主役を演じているそうです(未鑑賞ს)…。


「大晦日の晩に死んだ者は、次の1年間、死神の使いとなって、死者の魂を回収する馬車の御者とならなければならない…」

北欧の死神伝承を基にした幻想的で伝奇的なサイレント映画…。



妻子を顧みず毎日酒浸り、人々の善意も嘲笑い、踏み躙るクズ夫ダヴィッド(シェストレム)…。

彼は運悪く大晦日の晩に喧嘩がもとで死んでしまいます…。

そこに現れたのは…死の馬車!! …彼は馬車の御者として次の1年間、死神に仕えなければなりません…。

死者の魂を回収するうちに、彼は自分の妻や子供たちが心中を決意したことを知ります…。

彼は初めて、心からの悔恨の涙を流し…そして死に至って、漸く自分の愚かさを知り、他人に与えた苦しみやその影響を身に沁みて感じるのでした…。

しかし時すでに遅し…そこで彼の取った行動とは?? 妻子を救うことは出来るのでしょうか…??



二重露光という映像トリックをふんだんに使い、幽体と肉体の分離を巧く表現します…これはドライヤーの『吸血鬼』でも観られた技法です…。

海の上を走る馬車…ドアを通り抜ける霊魂…ダヴィッドの体から魂が抜けていくシーンも怪奇的で見事です…。

そしてキューブリック監督の『シャイニング』で有名なあのシーン…今作が元祖…!!

アヴァンギャルドなドイツ表現主義とは違い、徹底したリアリズム…サイレントに有りがちなオーバーアクトではなく動きも自然で流麗です…そして映像トリックを使ってとても霊的でホラーの要素も…。


人間の愚かさをとことんまで追い詰めた作品…私的にはドイツ表現主義が好みですが…北欧ならではの幻想的な幽玄美を堪能出来ます…。
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