似太郎

アントニオ・ダス・モルテスの似太郎のレビュー・感想・評価

4.6
【移行段階】

ゴダールやアンゲロプロス『旅芸人の記録』にも影響を与えた作品。シネマ・ノーヴォの旗手、グラウベル・ローシャが描く革命的気分高揚映画。

時空と概念を超越した支配階級と小作人の関係性や反乱をカオティックに描きつつ、敢えて西部劇のフォーマットを借り綴られる一代叙事詩。当時のブラジルに於けるポスト・コロニアズム映画の最高峰でもある。

ゴダールの『東風』やデニス・ホッパーの『ラストムービー』と並んで前衛/極左プロパガンダとも思える過激な内容で、全編ドラッギーな映像とジャンプ・カットの雨霰。69年という変革の時代の空気感が良く現れている為か相当パッショネイトな作劇。

基本、据えっぱなしのカメラで長回しながら後半にかけてどんどんアブノーマルな構成になっていくのが凄いの一言。日本ではATGが配給したので当時の新左翼運動と微妙とリンクする箇所もある。今尚、斬新な映画的イメージに満ち溢れた危険極まりない作品。またスコアが『AKIRA』の芸能山城組と若干ダブる。
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