てつこてつ

転校生のてつこてつのレビュー・感想・評価

転校生(1982年製作の映画)
4.0
WOWOW録画で本当に久々に鑑賞。

男女入れ替わり物の元祖であり、大林宣彦監督の名を一躍轟かせた青春映画の佳作。「時をかける少女」「さびしんぼう」と併せて、大林監督の故郷を舞台とした尾道三部作の第一作にもあたる。ジュブナイルジャンルという言葉を初めて打ち出した作品。

この後、何度もリメイクされたが、この主人公の男子・女子中学生役に、可愛いアイドルやイケメンスターをキャスティングするのではなく、劇団所属で既に子役として活躍していたファニーフェイスでコケティッシュな魅力溢れる小林聡子と尾美としのりを抜擢したのが結果的に大正解。

性別が入れ替わった演技は、やはりそれなりに演技の経験値が高くないと若い俳優には、かなり難しい。それに身体だけ女子中学生になってしまった男子中学生が自分の膨らんだオッパイに驚くシーンがあり、この作品では、とても重要な意味を持つため、そもそも大手事務所所属のアイドルでは絶対にNG出て実現できなかっただろう。

昔鑑賞した際には、やはり、中身は男子という設定の小林聡美の、より分かりやすく躍動的な演技のほうが目立って印象に残りやすいが、こうやって改めて見返してみると、尾美としのりの男子中学生の身体に入り込んでしまった思春期真っ盛りの女子中学生らしい戸惑いや恥じらいを奥ゆかしく表現した丁寧な演技に感心させられる。男友達にいじめられ、学校も休みがちになり、ついには家出を決行するまで思い詰める羽目になる表情は、少女そのもの。「エッチっ!」と彼が叫ぶ芝居は、結構クセになる。

バッハや様々なクラシックの名曲を要所要所で使っているのも効果的。

漁港からそのまま急峻な山肌に沿って家屋が連なる尾道のロケ風景が実に画になる。尾道三部作や、「ふたり」等で当時は大林宣彦ファンでもあった自分は、二十年くらい前になるであろうか、聖地巡礼宜しく、様々な作品の名場面となったロケ地巡りをしたっけな。この作品内でも登場する尾道ロープウェイの山頂の岩山から海を見下ろした情景、男女入れ替わりのきっかけとなる御袖天満宮の大階段、入江若葉と小林聡美が入るレトロな雰囲気の喫茶店とか思い出深いな。

小林聡美は、この作品の数年後にフジテレビの深夜番組「やっぱり猫が好き」でブレイク。脚本を手掛けた将来の伴侶となる三谷幸喜との出会いのきっかけとなる。

尾美としのりも持ち前の高い演技力を活かして、現在も色んな映画やドラマの名脇役として活躍しているようで本当に嬉しい。自分の中では、彼は、韓国映画界で「猟奇的な彼女」でブレイクした後も活躍を続けるチャ・テヒョンとどこか重なって見える部分がある。
てつこてつ

てつこてつ