とら

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングルのとらのレビュー・感想・評価

4.2
スコア4以上の作品はまた観たい作品です。

劇場版クレヨンしんちゃんを考える際は、やはりオトナ帝国・戦国大合戦が特異点的に存在しており、2作以前・2作以後で捉えるのが良いと思います(より厳密には、「2作以後」もさらに2分割できると思います)。この作品はまさに2作の直前であり、「2作以前」の集大成と言えるような作品です。演出はやや古臭さ(当時の原作漫画のノリ)を感じるところありますが、圧倒的なテンポ感とギャグのオンパレードに酔いしれることができます。

久々に鑑賞しなおしたのですが、やはり無駄がないストーリーだなとも思いました。劇場版クレしんは日常・非日常のアンバランスさを楽しむものだと個人的には解釈しているところ、以前期の作品の多くは「しんちゃんが無理やり非日常に誘い込まれ、仲間と共に敵を倒す」構造なのですが、今作は実は仲間が劇場版オリジナルキャラではなく、更に言えば映画ヒロインも登場しません。その代わり、カスカベ防衛隊とひまわり(&シロ)にスポットが当たっています。このようなオリジナルキャラに頼らず「しんちゃんの日常の仲間たち」が「非日常」に立ち向かう構図は、今後のオトナ帝国や(一応)カスカベボーイズにつながっていくのだと思います。

さて、本作を語る上で欠かせないのは敵キャラの魅力です。前述の通り、今作はほぼ劇場版オリジナルキャラが登場しない(いわゆる敵幹部もいません。いるのは大量のお猿さん)のですが、その代わりに最高にクールなキングが全てを背負って登場します。彼の凄さは、その能力の高さ(これをすぐにわからせる演出もすごい)のみならず、敵であってもしんちゃん達をしっかりと評価する潔さです。この魅力ある敵キャラが「非日常」を一手に担うことで、ストーリー自体に無駄がなく(=非日常を余分に説明する必要がない)、「しんちゃんの日常の仲間たち」にスポットを当てることができるのだと思います。

いつ観ても飽きない不朽の名作ですね。見返す時はBGMにも着目してください。実はかなり秀逸な演出補助をしていると思います!あ〜、豪華客船に乗りたい〜。
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