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俺たちに明日はないのEyesworthのレビュー・感想・評価

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)
4.9
【アメリカに昨日はない】

アーサー・ペン監督のアメリカンニューシネマの元祖にして傑作。ウォーレン・ベイティの製作・主演作。ヒロインは駆け出しのフェイ・ダナウェイ。実在の銀行強盗ボニー&クライドの波乱に満ちた描く。

〈あらすじ〉
はねっかえり娘ボニー(フェイ・ダナウェイ)はある日、小悪党のクライド(ウォーレン・ベイティ)と知り合う。ハミ出し者同士恋に落ち、カップルの自動車泥棒コンビとなって無軌道な犯罪を繰り返す2人。やがて仲間が増え、ついには銀行強盗団になる。一味は大衆の間で義賊として人気を博すが、当然警察から追われる身に。仲間のC.W.の実家に身を寄せるも、C.W.の父親は息子を救うためボニーとクライドを警察に売り…。

〈所感〉
最もカッコイイ邦題ランキング堂々の一位。素晴らしい傑作。1967年の作品ながら全く古臭さを感じさせない。当時のアメリカ人の住宅や車やファッションから当時の景気や流行が見て取れる。世界恐慌があり、当時の閉塞したアメリカ社会では、夢と希望を描く映画に観衆は魅了されなくなっていた。そんな綺麗事映画に対するアンチテーゼとしてこの映画がアメリカ人達の心にぶっ刺さったのだろう。ダークヒーローとして銀行を襲いまくるバロウ・ギャングが新聞で英雄視され、世論を味方に付けられるのがまさに当時のアメリカ的事態である。善悪の天地が裏返っている。常識に縛られずにインモラルな発言と行動を繰り返すクライドと今の暮らしに退屈しているどこにでもいるヒロインのボニーの犯罪紀行は賑やかで時に暗くとても振り幅があって面白かった。ジーン・ハックマン演じるバックとその妻ブランチが加わってからは物語が加速度的に面白くなっていく。ドタバタ強盗劇で随分とコメディー色が強いなと思えば、シリアスなムードの銃撃でバッドエンドで終わる緩急の使い方が巧い。彼らに感情移入できないが故にこの映画を低評価している人も多いのだろうが、寧ろ私は逆に感じた。全く同情できないからこそ、彼らの嬉々と悲哀を素直にストレートに受け取れたのだと思う。車の中に人が多すぎるとこで爆笑した。モスがアホすぎて爆笑した。ブランチのヒステリーで爆笑した。すべての笑いの質が非常に高い。絶対アカンけど、あんな風に気の向くままに他人の車を乗り捨てながら旅できたら楽しいだろうな。
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