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若者のすべてのEyesworthのレビュー・感想・評価

若者のすべて(1960年製作の映画)
4.8
【瓦解と郷愁】

イタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督の1960年の代表作。巨匠ヴィスコンティがイタリアに存在する南北格差の問題を真正面から取上げ、南部の家族の崩壊を描いた壮大な叙事詩。 5人兄弟の三男ロッコをアラン・ドロンが演じる。

〈あらすじ〉
父を失い南部で貧窮にあえいでいたパロンディ家は、北部の大都市ミラノに出稼ぎに来ていた長兄を頼って、老いた母と兄弟4人でやって来る。しかし、田舎者の彼らに都会の風は冷たかった。ボクサーとして頭角をあらわしはじめた次男のシモーネは娼婦のナディアにのめり込むが、ナディアが弟のロッコに思いを寄せていると知ったとき、ロッコの前でナディアを激しく犯してしまう..。

〈所感〉
ルキノ・ヴィスコンティ監督は『ヴェニスに死す』以来の鑑賞。現代は「ロッコとその兄弟」だが、なぜか「若者のすべて」これはちょっと疑問の邦題。兄弟のすべてとかではなく?最後の花火に今年もなったら〜何年経っても思い出してしまうな〜
3時間超の大作なので一度間を空けて見た。母と5人兄弟の一家の新天地ミラノでの暮らしを兄弟の数と同じ5パートに分けて語られる。母親が今でいう典型的な毒親で、自分の価値観がすべて、子どもの言うことに全く耳で見てられない。長男ヴィンチェンツォは一番家族に対してドライで存在感がない。早々に結婚して家を出る。次男シモーネはボクサーとして生計を立てるも没落して借金まみれになって家族に迷惑をかける人間のクズ、三男ロッコは誰よりも優しく兄弟思いでそれ故に行き過ぎた行動に出てしまう。四男チーロは真面目でアロファロメオに勤める唯一のまともな収入源。五男ルーカはまだ幼く、それでも家族のために懸命に尽くしている。それぞれが兄弟のために良かれと思っていることが裏目にでてしまい関係が瓦解していくミゼラブル。どうしようもなく憐れだが美しい兄弟の絆。破滅を呼ぶのはやはり女。希望は故郷にあり。イタリアは悲劇がよく似合う。
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