Eyesworth

いぬのEyesworthのレビュー・感想・評価

いぬ(1963年製作の映画)
4.7
【遠吠え、犬掻き、犬死に】

新鋭推理作家ピエール・ルズーの同名の小説を原作に、フレンチ・ノワールを代表するフランスのジャン・ピエール・メルヴィル監督が脚色、演出した1963年の作品。

〈あらすじ〉
刑務所を出所したモーリス(セルジュ・レジアニ)は、かねてからの仕事仲間であるジルベールを訪ね、彼が妻を殺した張本人と確信して射殺した。さらに、ジルベールが宝石強盗で得た宝石類と金を奪い、近くの空き地にそれを埋めた。その後、親友のシリアン(ジャン・ポール・ベルモンド)の用意してくれた穿孔器を持ってレミーと二人である街の大邸宅に押入ったが、警官隊の包囲作戦をうけ、レミーは殺され、彼も一弾をうけた。シリアンがモーリスの愛人テレーズから無理やり仕事先を聞きだして密告したのだ。モーリスはシリアンがいぬ(情報屋)だという噂を信じざるを得なかった…

〈所感〉
『レザボア・ドッグス』的な裏切り者=犬探し系ノワールだが、フランス映画らしく最小限度の見せ方とカメラワークでとてもスタイリッシュで洗練されている印象。ただ、内容はなかなか掴みにくい。この手の映画は人物の関係性をある程度把握していないとついていけなくなる。最初からあからさまに怪しいシリアンはミスリードだと思ったが、この真実は胸が痛い。裏社会に生きる男の友情と裏切りという定番は後々生まれるフィルム・ノワールの雛形となったのだろう。興味深い一作だった。
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