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MEMORIESのRenのレビュー・感想・評価

MEMORIES(1995年製作の映画)
3.5
『アキラ AKIRA』の大友克洋監修、相変わらずのぬるぬる動く手書きアニメーションで送られるオムニバス作品。三者三様の魅力が楽しめる良作だった。

第一話『彼女の想いで』
今作で最も入り組んでいて見応えのある作品。宇宙というSF的で未来的な要素、豪華絢爛でクラシカルな要素、そしてホラー的要素を融合させた唯一無二の空気感が最高だった。観ている人の心をじわじわ蝕む なんか不気味な演出、幻影と静かな狂気に取り込まれていく意地の悪い展開が、やっぱり今敏だな〜!と思わずにはいられない。懐中電灯で一部分だけが明るく照らされるの怖かった....。そして「記憶は逃げ込む場所じゃない」が痛烈に響く。全編、『2001年宇宙の旅』のラストのような雰囲気を少し感じた。出てくる宇宙船の名前が「コロナ」。

第二話『最臭兵器』
宇宙の次は山梨県の山中。体から強烈な異臭を放つ化学兵器と化してしまった主人公を止めようとするお話で、終始わかりやすくコメディタッチなのが可笑しくて個人的には一番好き。男一人のためにありえない数の兵器を投入して爆撃していく、そんなことあるかい!の応酬が堪らなく好きだった。オチの、ですよね〜感と歯切れの良さも含めて、星新一感や世にも奇妙な物語感が最も強い一作。鈍すぎる主人公の言動にフラストレーションが溜まりつつ、においは自分じゃ気付かないってことへの皮肉も込められている。言わずもがな作画は神。

第三話『大砲の街』
超スチームパンク。大砲を撃つために作られた移動都市という設定だけで2時間の映画を観たいくらいなのに、上映時間は今作最短の20分強。勿体ないと思いつつ、全編ワンカット風アニメーションの観たことのない映像に心躍らされた。そして大砲一発を撃つという重労働の描写が冴える。戦争の環境下に置かれた子どもは砲撃手に憧れを抱くものの、そうはなって欲しくない、でも現実に戦争はある、という葛藤らしきものも垣間見られた気がした。ストーリーらしいストーリーは無く、映画というよりも、街のPVだと解釈した。

エンドロール、石野卓球の手がけた劇伴がカッコ良すぎてそれだけで満点。観る人で好みの短編がまるでバラバラになりそうな、良い映画だった。
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