似太郎

昼下りの決斗の似太郎のレビュー・感想・評価

昼下りの決斗(1962年製作の映画)
4.4
誤解を恐れずに言えば、私はサム・ペキンパーという監督を然程買っていない。

内容が古臭すぎて(演出・手法のことではない)、私の父親世代か団塊の世代にしか理解できない時代錯誤的な雰囲気が漂う。

あの頃特有の厭世観…。『マッシュ』とか『ジョニーは戦場へ行った』もそんな印象があった。
画面が貧乏臭くてゾーッとなる。かつての健康的で華やかなアメリカ映画は何処へ行ったのかしらん?

『ワイルドバンチ』にしろ『ゲッタウェイ』にしろ『戦争のはらわた』にしろ、黒澤明と同じような【社会正義臭】がするのが玉に瑕だった。

むしろ70年代ニューシネマ特有の「左派臭」が消えた辺りからアメリカ映画は面白くなる。個人的にレーガン政権下の映画の方が遥かに豊かだったと思っているので、要するにスピルバーグ、ゼメキス時代の方が思い入れが強いのだ、私は。

それとは真逆にレーガン政権下のバブリーな映画を忌み嫌う人もいるようだが、あの独特の【アメリカ的記号】【ハリウッド黄金期のテクニカラーの魔力】を知っている者からしたら、たまらない贈り物だった筈。

本作はそんなまだ保守的だった頃のサム・ペキンパー作品。私が尊敬するランドルフ・スコットの叔父貴と『サリヴァンの旅』のジョエル・マクリーが競演した単純痛快ウエスタン。過激な暴力描写はほぼ無い。アメリカの良心=ウエスタンの伝統を感じさせる色彩豊かなMGMカラーが美しい。

あの蓮實重彦ですら「ペキンパーは『ワイルドバンチ』以前の方が面白い」と発言しており、やっぱり私と同意見だと思った。どうも説教臭くなるからなぁ〜『ワイルドバンチ』の後半は。結局、黒澤のコピーでしかない。

ペキンパーの理屈っぽい作風が苦手な私には初期の単純だった頃の方が合ってるのである。ある意味、純粋映画。
似太郎

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