MrFahrenheit

キャバレーのMrFahrenheitのレビュー・感想・評価

キャバレー(1972年製作の映画)
4.5
ブロードウェイのミュージカルをボブ・フォッシーが1972年に映画化した本作。ずっと見たいと思いつつ、ようやく初鑑賞。

1931年、台頭するナチスの影が忍び寄るベルリン。スターを夢見てキャバレーで働くアメリカ人のサリー(ライザ・ミネリ)と、イギリスから来た学生のブライアン(マイケル・ヨーク)が出会い、関係を深めていく。

初見だが、いくつかの有名なナンバーは耳に馴染みがあった。退廃的で享楽的なベルリンのキャバレー。19世紀末のパリにも通じる雰囲気。冒頭のナンバー ”Willkommen” から一気に呑み込まれる。ジョン・ガリアーノの90年代後半のコレクションのような中毒性のある退廃美。眼福。

ミュージカルシーンはキャバレーのショーに集約されており、突然歌い出すミュージカル感はほぼない。サリーとブライアンの恋愛がストーリーラインの柱だが、一筋縄でいかない展開に素直にドキドキさせられた。物語終盤でサリーとブライアンが2人の将来について語るシーンは、サリーの心境にも2人の決断にも納得がいった。バッドエンドともハッピーエンドとも言い切れないのがこの作品の魅力の一つだと思う。

物語途中から、享楽的なキャバレーにまで入り込む反ユダヤの世相。そしてこの後の世界の不幸を予感させる、不穏なラストシーン。一つの時代の一つの物語が濃厚に描かれた、いい映画だった。いつか舞台も見たい。