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地に堕ちた愛のnetfilmsのレビュー・感想・評価

地に堕ちた愛(1984年製作の映画)
4.2
 その熱狂的な興行は、アパルトマンの一室で日夜繰り広げられる。女2人男1人による戯曲は三角関係による痴話げんかを繰り広げる真に下世話なものだが、その日の公演の帰りに、私はこの戯曲の創造主だと告げられる。何とも胡散臭い冒頭部分だが、女優のシャルロット(ジェラルディン・チャップリン)とエミリー(ジェーン・バーキン)は、その戯曲の作者クレマン(ジャン=ピエール・カルフォン)に呼ばれ、彼の邸宅で新作を演じることを提案される。全ては真実なのかイカサマなのかわからない。この邸宅の一風変わったインテリア、そしてペテン師のような手品師ポール(アンドレ・デュソリエ)のイカサマがさらに拍車を掛ける。いかにもトンデモ設定のジャック・リヴェットらしい幻想譚は現実と幻想、リアルと虚構の間を何度も往来し、やがて悪夢にうなされ始める。ラストが決まっていない幕間ものは徐々に人間の深淵に迫って行き、親友同士である2人の女性は主人公のたった一つの役を巡り、争いを繰り広げる。チャップリンの娘のジェラルディン・チャップリンとゲンズブールの元妻であるジェーン・バーキンのある種の倒錯した欲望と葛藤とが極めて即興的に意図的に配置され、クライマックスにはもう1人の女ベアトリスが浮かび上がる。30年ぶりに再見したがヌーヴェルヴァーグの中でもとにかくド変態で、正しく人を選ぶ映画で、日本劇場公開時より51分長い完全版で176分というのが心底とち狂った野心作。
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