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切腹のbennoのレビュー・感想・評価

切腹(1962年製作の映画)
4.6
煙に巻かれた亡霊の如き甲冑…

覚書の口上に響き渡る琵琶の音(ね)…
                 

閉塞感と緊張感漂う井伊家の上屋敷を訪れるひとりの浪人…津雲半四郎(仲代達矢)

天下泰平の世、侍には仕事は無く、背に腹はかえられぬと窮迫した浪人者が軽佻浮薄に切腹すると称し何がしかの金銭をゆすりたかるという行為が流行るご時世…

半四郎も例外に違わず切腹の為、井伊家の庭を拝借したいと申し出ます

家老、斎藤勘解由(三國連太郎)はそのことを苦々しく思い、その年の春に同じ用件でやって来た千々岩求女(ちぢいわもとめ)の話を語り始めます

実は半四郎は腹を切る所存など初めから無く、家老の話が終わると、今度は自身の身の上話を語ります

果たして半四郎の真の目的とは…??


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モノクロの映像で常に不穏な緊迫感が漂いますが…時代ものの台詞回しや語彙はしっくり馴染み…脚本が魅力的…一言一句噛み締めたい、やっぱり好きだなぁ〰︎時代劇!!

海外でもハラキリとして有名な《切腹》…武士としての潔さ、美学としての認識でしたが…描かれた《切腹》は美学では無い…ただ惨い、惨さしかありませんს

竹光で十字に腹を切る…《介錯》を求めても「まだまだ!! 」と生き地獄、直視出来ない程の残忍さ、黒い血が余計に生々しい…

竹光浪人と揶揄されても、刀を売り家族を守ろうとした求女…しかし武士の魂である刀に拘り、しがみつき、捨てることが出来なかった半四郎…彼がそのことを悔いて涙するシーンはまさに本物の武士のあり方を問うているよう…


 《武士の面目》とは…所詮上辺だけを飾るもの


屋敷という閉ざされた空間で行われる非人間的な殺戮を《切腹》という美談で処理してしまう武家社会の堕落…いつの時代も何も変わってはいないのです…これはそんな当時の武士に対するアンチテーゼ

怒りに燃える形相と目つきが凄まじい仲代
狡猾で不気味な非人間像の三國
そして冷徹な家臣の丹波……3人が頗るいい

仲代と丹波の果し合いのシーンはカメラも斜めや下からと劇画的で面白く、墓、卒塔婆、強風に波打つ草や雲の魅せ方も巧妙

そして終盤の立ち回りも圧巻…家臣を盾に廊下を横這いする半四郎や胸元で腕をクロスするポーズ…ここでも舞台劇のような演出で、これまた好みです

また、全編を通して琵琶の音(ね)がとても効果的、武満徹のセンスが素晴らしい

ご先代様と崇められ、武家の象徴でもある甲冑を破壊…

そして…本来の武士の姿を半四郎に見事に投影…いやぁ〰︎カッコいい…!!


thanks to; Shoさ〰︎んˏˋ°•*⁀➷
とっても遅くなりましたが…ぁㇼゕ̎と੭່ごㄜ¨ぃましたෆ* 時代劇面白くて、もっと観たいですっ…ෆ*
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