HAYATO

恐怖の報酬のHAYATOのレビュー・感想・評価

恐怖の報酬(1953年製作の映画)
4.1
2024年146本目
命懸けの輸送に挑む荒くれ者たちを待ち受ける試練
ヌーヴェル・ヴァーグの生みの親・アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督による傑作サスペンス
中米のベネズエラ。希望のない日々を送っていたマリオたち4人の荒くれ者は、ある日、500km先の油田火災現場に大量のニトログリセリンを運ぶ仕事を請け負った。少しの振動で爆発しかねない危険な仕事だったが、一攫千金のために命を懸けて現場へ向かう。しかし、その道中にはさまざまな困難が待ち受ける。
原作は、ジョルジュ・アルノーの小説『Le Salaire de la peur』。
第6回カンヌ国際映画祭にてグランプリと男優賞(シャルル・ヴァネル)を、第3回ベルリン国際映画祭にて金熊賞を受賞した。
多くの作品で引用されている設定のオリジンに触れる機会が訪れた時の興奮は唯一無二。僅かな振動でも大爆発を起こす膨大な量のニトログリセリンをトラックで輸送する。この設定を読んだだけでも手に汗握る緊張感が伝わってきた。
予想に反して物語の内容は前後半で大きく二分され、前半パートではゆっくりとしたテンポで登場人物の性格や生き様が描写され、後半パートではメインイベントの地獄の輸送作戦が展開される。
前半パートで人物描写にかなりの時間をかけることで、貧困に苦しみ、行き場を失っていた男たちの焦りと絶望を観る者に共有させ、高額報酬を条件に危険な任務を引き受ける彼らの行動に説得力が生まれていた。とはいえやや冗長な気もする。
後半パートは非常に見応えがあり、舗装されていない悪路に留まらず、腐敗した木でできた足場、道を塞ぐ巨大な落石、石油の沼など、行く手を阻む様々な障壁が次々と現れ、それらを試行錯誤しながら回避していく展開が楽しい。
極め付けはクライマックス。マリオの帰還を待って酒場で踊る人々と蛇行運転するマリオの対比が強烈であり、「油断」ほど恐ろしいものはないと思い知った。
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