似太郎

赤い殺意の似太郎のレビュー・感想・評価

赤い殺意(1964年製作の映画)
5.0
【女は強くなる💪】

今村昌平作品中、最もフリーキーで危うい雰囲気が満点のコメディである。前作『にっぽん昆虫記』ではまだ構成らしきものがあったが、本作にはそれすら無い。映画全体の抽象度が高いからだ。

主演春川ますみの素っ頓狂なコメディエンヌぶりが痛快で、犯されて強くなる東北訛りの女性を快演。のちに日活ロマンポルノのベースとなるグチャドロな人間関係にフォーカスを当てた今村昌平ならではのカオティックな味わい。昭和ヒソヒソ話。

姫田真左久による凄まじい長回し撮影(列車を丸ごと撮ったクレーンショット!)など、全編に於いて破壊的な「ワザ」が炸裂している。主人公にしか見えない夢魔的風景がそのまま観客の視界とシンクロする辺りも秀逸。閉鎖された田舎の不気味な風習と落ちこぼれた青年(露口茂)の性的欲求がやがてムラ全体の「変革」へと昇華される構成がずば抜けている。

戦後日本の断絶点を描いた意味では、新井英樹の漫画『愛しのアイリーン』と類似点が多い。(むしろ本作へのオマージュなのだけど)
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