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砂の女のクリームのレビュー・感想・評価

砂の女(1964年製作の映画)
4.1
岸田今日子さんの妖艶な美しさとホラー感がやっぱり素敵。砂だらけの異様な世界観と妖怪かも?と思える怪しい女に一瞬で心を奪われ、目が離せなくなります。CGなどなかった時代にこんな奇妙な世界を表現しているのは凄いと思います。解釈はちょっと難しく感じたけど、世界観だけで十分楽しめました。面白かったです。

休暇で昆虫探しに来た教師の男は、砂丘で老人と出会い、泊まる家を紹介して貰います。そこには、夫と娘を亡くした女が暮らしていた。翌朝、出掛けようとすると縄梯子が無い。砂の崖に囲まれた家に閉じ込められてしまい、砂掻きの仕事をやるしかなくなります。不条理な軟禁生活に怒りを露にするが、誰も助けに来ず、妖しげなその女と砂に囚われて行くのだった。



ネタバレ↓



最初は逃げる事に必死になります。何とか逃げるも砂に埋まってしまい、元の家に戻されます。
やがて、砂さえ掻いていれば、最低限の生活が送れる事がそれほど嫌では無くなります。男は外の世界で疲れ、ここへやって来た。女は、囚われの生活に満足していて、それを良しとするのも女の自由だった。彼女は外の世界を知らず外が怖いと思っていたのかも知れない。だけど、男が現われずっと居て欲しいと思っていた。
女が子宮外妊娠で病院へ運ばれると縄梯子がかかったままになっていた。
男は、一度逃げ出すが、自分の意思で戻って来る。男は、効率的な水の貯蓄装置を思いついた事をその発明の価値が解る部落の人間に見て欲しかったのだ。そして、男が居なくなってから、7年後に男の失踪届けが受理された。終わり。

男は、ラストで慌てて逃げなくても時間はあるし、ゆっくり考えようと安易な選択をした。逃げる事が面倒になり、先延ばしした事で、現状に順応して行った。そして7年もの月日が過ぎてしまい、失踪届けが受理され、男は、あのまま暮らすのだろう。それも幸せなのかも知れない。
あの場に留まる為の言い訳として、水の貯蓄装置を皆に見て欲しいという事を理由にした様に思えた。
解釈は人それぞれで良いのだと思う。
砂の纏わり付く不快感の表現が絶妙で、やっぱり、怪しげな岸田今日子さんが作り出す世界観が素晴らしかったです。

※みんとさん、好みの作品でした。ありがとう♡
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