アキ・カウリスマキ監督作品。これで特集作品をすべて観賞することができました。嬉しい!コメントでランキング載せたいと思います。
本作は「冷戦直後の1993年6月、レニングラード・カウボーイズと旧ソ連退役軍人らで結成されたレッド・アーミー・アンサンブルとの合同コンサートのライブ・フィルム」(☆1)である。
そのためライブのドキュメントが主ではあるが、冒頭にレニングラード・カウボーイズとレッド・アーミー・アンサンブルがコンサートをするために契約する劇がある。この劇のシュールさは堪らない。
本作をみて思ったことは、音楽は誰しも主役になれること。おじさんでも変なモヒカンでも歌が観客の心を震わせればその姿はかっこいい。そして歌い手だけじゃない。奏者であっても主役になれる瞬間がある。もちろんにぎやかし隊のようにステージに立つ全ての人に言えることだ。このことがカットの切り替えで分かる。演奏する手、歌い手、観客、パフォーマー。カットはその瞬間の主役を映しているのだ。
そんなことを考えていたら、すぐにエンドロールになってしまった。音楽の力って凄い。
☆1 ユーロスペース公式ホームページ(http://www.eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000739 )
蛇足
レッド・アーミー・アンサンブルに参加している旧ソ連退役軍人は真面目なんだと思う。レニングラード・カウボーイズの不真面目さやパンクさが際立ってて笑ってしまった。そして観客がレニングラード・カウボーイズの楽曲で盛り上がってて、軍人たちのことを思うと少し切ない。
きっとカウリスマキはレッド・アーミー・アンサンブルが体現する全体主義や旧ソ連型共産主義が嫌いで、そのアンチ・テーゼとしてレニングラード・カウボーイズを生み出したのだと思う。だからこそ合同コンサートは、思想上の休戦であり、契約の劇が必要だったと邪推する。
そんなレッド・アーミー・アンサンブルとレニングラード・カウボーイズの釣り合わない様と、けれど音楽で絆が紡がれる瞬間をみるだけでも本作を面白いと言えるかも知れない。腕を組み合うのはやっぱり感動ですよ。