逃げるし恥だし役立たず

遠い太鼓の逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

遠い太鼓(1951年製作の映画)
3.0
1840年のフロリダ半島、セミノール・インディアンに捕らわれた民間人の救出のため、ワイアット大尉率いる海軍一隊が、猛獣や毒蛇の住む沼沢地帯をわたり、セミノール・インディアンの砦を爆破して生還するまでの死闘を描く、第二次セミノール戦争を題材にした、『征服されざる人々』などに通ずる冒険活劇。監督はラオール・ウォルシュ、『スター・ウォーズ』をはじめとする多くの映画・テレビ番組・ゲームなどで使用されていることで有名な音響素材「ウィルヘルムの叫び」を考案、最初に使用した作品である。
1840年、フロリダ地方ではインディアンに対して七年間も悪戦苦闘を続けていた。ザカリー・テイラー将軍(ロバート・バラット)は、フロリダ辺域の防備にあたるクィンシー・ワイアット大尉(ゲイリー・クーパー)にリチャード・タフト海軍中尉(リチャード・ウェッブ)と偵察兵のモンク(アーサー・ハニカット)を送り出す。彼らは任務のオカラ酋長率いるセミノール・インディアンの古い遺跡の砦と武器を粉砕することに成功。ジュディ(マリ・アルドン)ら捕虜を救い出すが、セミノール・インディアンに完全に包囲されてしまう。迫り来るセミノール・インディアンの大群からの決死の逃避行と戦いが始まるが、沼地には別の危険も待っていた…
エヴァ・グレイズ国立公園でのロケ撮影で自然が美しい湿地帯の海や沼や川が舞台で、南部辺境におけるインディアンとの攻防が息詰まる演出の積み重ねで描かれる。要塞から助け出した人質の若い女ジュディ(マリ・アルドン)とワイアット大尉(ゲイリー・クーパー)にロマンスが芽生えて、決死の逃避行の末にインディアン酋長と決闘すると云う、内容自体は単純で淡々と進むため分かり易すい反面、全体に散漫で物語の現実感がない。
山岳地の起伏や斜面を背景に大砂塵でのパノラミックな構図取りに家屋のセット、スピード感ある乗馬シーンや迫力あるガンファイトが一般の西部劇だが、海岸地帯や湿原地など高低差のない平面的な背景にライフルやナイフを片手に沼地や茂みに下半身を隠してゾロゾロと徒歩で行進するため、展開に西部劇のアクション的な醍醐味が乏しく、ラストのワイアット大尉とオカラ酋長のナイフによる水中格闘も何処か肩透かしで、迫力あるシーンは要塞の爆破とマリ・アルドンの胸の大きさぐらい(ゲイリー・クーパーがナイフで髭を剃るシーンは何故か印象的だったな…)。今更観る価値が有るか無いかと聞かれたら無い、面白いかつまらないかと聞かれたら意外にも面白い、だが本作品が西部劇かと聞かれたら答えに窮する。
強烈なリーダーシップや人間的な深みを感じさせない役柄のゲイリー・クーパーが若いリチャード・ウェッブを脇に追いやりヒロインのマリ・アルドンを射止めるのは流石に納得がいかない…ヘビやらワニがウジャウジャいて、インディアンが襲ってくる状況でよくイチャつけるな…