オーウェン

ナイトホークスのオーウェンのレビュー・感想・評価

ナイトホークス(1981年製作の映画)
4.0
この映画「ナイトホークス」は、シルヴェスター・スタローン主演の刑事映画。

刑事映画の最大のポイントは二つあって、一つは主人公の刑事に、どんなキャラクターを持たせるか。
スーパーマン刑事にするのか、人間味豊かな、個性的な刑事にするのか。

もう一つは、犯人の作り方だ。犯人がどんな性格の持ち主で、いかなる形の犯罪を意図しているのか。
その設定によって、映画は膨らみもすれば、しぼんだりもする。

「ナイトホークス」は冒頭、女装したシルヴェスター・スタローンの刑事が、相棒の刑事と共に三人組の強盗を逮捕するシーンから始まる。
続いて、ロンドンのデパートに爆弾をセットする犯人が描かれるが、刑事と犯人のこのカットバックは、ラストシーンをも暗示している。
女装した刑事は、どんな形で国際的テロリストの犯人と対決するのか。

ウルフガーという国際的テロリストが、ニューヨークへ潜入したとの情報を、FBIはキャッチする。
対テロリストのコマンド部隊が作られることになり、ニューヨーク市警の刑事だったスタローンは、コマンド部隊に編入される。

このスタローン刑事は、美しい妻と離婚している。妻の職業はデザイナー。
夫の危険な仕事に耐えられないというのが、離婚の原因だが、スタローンは、彼女に未練を持っている。

この設定は、刑事映画ばかりでなく、一般の映画でもよく使われ、何とも常套的で陳腐のようにみえるが、別れた妻の存在が、ストシーンに巧みに生かされていて、実にうまい。

サスペンス映画などで、よく出来た、うまい脚本というのは、奇抜な発端から意外な展開になり、そして、ちょうど話のど真ん中に"中ヤマ"という山場があり、続いてクライマックスを迎え、そしてラストシーンでのドンデン返しになると思っています。

この映画の脚本も、まさにこれにピタリと当てはまっていて、女装の刑事が強盗を逮捕する発端から、顔を整形手術したテロリストが、ニューヨークに潜入するという展開になり、ディスコで刑事が犯人を見抜き、追いつめようとする。
犯人は地下鉄を利用して逃げようとするが、その追いかけが"中ヤマ"。

そして、犯人は逃げ切り、爆破計画に出る。
犯行を未然に阻止しようとする刑事は、再び犯人を追いつめる。
追いつめられた犯人は、今度は乗客を人質にしてロープウェイに立て籠もる。
この部分がクライマックス。

刑事の活躍があって、乗客を無事救出するが、映画は、ここでは終わらない。
ロープウェイから犯人の姿は、消えている。犯人は、一体どこへ逃げたのか? 。

犯人は、復讐のために、刑事の別れた妻を狙っているのではないか?。
映画はラストにきて、もう一度、クライマックスを迎え、ドンデン返しでエンドマークとなる。

この映画は、このようにサスペンス映画の脚本のお手本のような作品で、厳密に観ていると、辻褄が合わずに、強引に飛躍してしまっている部分もあるけれど、これでもかこれでもかと、スリリングなシーンを用意して、たたみかけてくる。

この「ナイトホークス」は、1981年の作品なので、「ロッキー」で大ブレークして、スタローンがスーパースターにのし上がった後の作品なので、その意味では、スタローンのワンマン映画なのだが、その割りには、スーパーマン刑事の物語だという印象は、さほど強くない。

一方、犯人の国際的テロリストのウルフガー(ルトガー・ハウアー)は、テロ行為そのものに取り憑かれた男である。テロのためのテロ。
テロ行為に取り憑かれているうちに、目的と手段を見失い、ニューヨークそのものを爆破することに生き甲斐を見い出しているような男なのだ。

どちらかと言えば、「ダーティハリー」の系列に属する映画だとは思うが、しかし、この映画は、捜査の連携プレーや、刑事の人間的な悩みも過不足なく描かれていて、質のいいエンターテインメント作品に仕上がっていると思う。
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