むらむら

ザ・ロックのむらむらのレビュー・感想・評価

ザ・ロック(1996年製作の映画)
5.0
(後半は、サンフランシスコでのちょっと怖い体験記です)

アクションスリラーの名作として名高い作品。

国に絶望し、何百万人を殺戮可能な化学兵器を研究所から奪取して、アルカトラズ刑務所跡に人質と共に立てこもった、ベトナム戦争の英雄、エド・ハリス一味。40時間以内に要求が通らないと、サンフランシスコに化学兵器をばらまく。彼らの目的を阻止するため、FBI化学班のニコラス・ケイジと、唯一アルカトラズ刑務所から脱獄したという伝説の服役囚ショーン・コネリーに招集がかかる、という話。

戦争の達人、脱獄の達人、化学の達人たちがプロフェッショナルの技を駆使する緊張感たっぷりの140分。各人の動機や気持ちの揺れがキレイに伝わってくるハリウッドのお手本のような脚本。もはやこの脚本家なら、この作品に「ゲームの達人」やら「太鼓の達人」を出しても違和感がなかったかもしれない。

舞台の中心はアルカトラズ刑務所跡だが、実際に潜入するのは中盤から。前半にも、化学兵器奪取作戦とか、サンフランシスコ市内でのドハデなカーチェイスとか、これでもかとアクションを入れてくるのはジョエル・ブラッカイマー印。

どうでもいいけど、

「マスコミには情報を漏らすな」

ってエド・ハリスが釘を指してるのに、サンフランシスコで車と電車を爆発炎上させて、明らかに目立ちまくっているのは笑ってしまった。

他に気になった点を幾つかあげとく。

・化学兵器が、大粒な巨峰(グリーン)みたいでちょっと美味しそうだった

(注 コメントで まいやん さんより「巨峰は紫色しかないから、グリーンはシャインマスカットでは?」という指摘を頂きました。

そ の と お り で す……高いブドウ食べたことないのがバレました😭)

・前半ニコケイがビートルズのレコードを5万円で買うシーンがあるが、ギター練習してる曲はレノン・マッカートニー作曲の「The World Without Love」(「ラストナイト・イン・ソーホー」でも出てきた)。

・アメリカのニコケイギャグで「Cage In Cage(ニコケイが牢屋に入る)」ってのがあるのだが、この作品で実際にニコケイが牢屋に入るシーンがあって、「おお、これか!」と感心してしまった。

・ショーン・コネリーが20年ぶりにシャバに出てきたという設定の割に車の運転とか上手かった

というわけで、こないだ観た同じくサンフランシスコが舞台の「ウィンチェスターハウス」と同額のアマプラレンタル400円。同じ金額払うなら、「怖くないお化け屋敷」が死ぬほど好きな人以外は、こっちを選ぶべき。

(以下、作品と関係ないサンフランシスコ旅行記)

その「ウィンチェスターハウス」の感想で、サンフランシスコ行ったときのことは書いた(https://filmarks.com/movies/77184/reviews/157194537 )が、その続き。

サンフランシスコ国際空港まで、知人とレンタカーで向かおうとしたとき。航空会社から連絡が。読むと、「機材到着の関係で、出発が7時間遅れる」とのこと。

本来は空港直行するつもりだったのだが、時間が出来たので、この作品の舞台である「アルカトラズ刑務所跡」に行くことにした。

なんせ俺は、以前、オーストラリアのパース行ったときに刑務所を改装したホテルに泊まって、硬いベッドで寝て大満足したくらいの刑務所好き。サンフランシスコ行ったら、伝説の「アルカトラズ刑務所跡」に行くのは悲願だったのだ。

「アルカトラズ刑務所跡」はサンフランシスコ港から船で20分くらいの孤島に建てられており、入島するには船ツアーへの参加が必須。

荷物はレンタカーに載せたまま、船ツアーに参加することにした。予約はしてなかったけど、なんとかなるんじゃないかと。

埠頭のそばに、200台くらい収容できる屋根で覆われた駐車場があったので、そこに車を停めることにした。地面にガラスの破片やらゴミやら錯乱しているものの、ラッキーにも空いてたので、すんなり駐車。

数分歩いて、受付に到着したら、まさかの「本日は完売」の表示。

俺が行ったのはちょうど夏休みに差し掛かる時期で、みんな観光で訪れているらしい。実際に人でごった返している。

「当日券は出てないの」と聞いてみたものの、全然出てないとのこと。何人かに聞いてみても、取り憑く島もなかった(島だけに)。

と、失意のもとに、車に戻る。

この駐車場、「一日停めるのに10ドル」と書いてあったので、実質数分しか停めてないものの、払わないで、なんか怒られるとイヤなので、管理人を探すことに。

数分探したら、黒人のガタイのいい兄ちゃんが清掃の仕事をしていたので声をかける。

「車を停めるお金を払いたい」って言ったら、

めっちゃ怒られた。

「え? え? どゆこと?」

兄ちゃん、俺たちにガチ切れして、早口でまくしたてるので完全には何を言ってるか理解できなかったが、どうやら

「ここに車を停めるのはダメだ! 他の駐車場にいますぐ動かせ!」

ということらしい。

「え? でも、ここ、一般に開放されてる駐車場ですよね?」

依然、事情を理解していない俺たちに、黒人の兄ちゃんは、俺たちの車を一瞥して、数メートル先に止まっているバンを指し示す。

「お前ら、あの車、みてみろ!」

……よく見るまでもなく、運転席の窓ガラスが完全に破壊されていた。

「あっちの車も、みてみろ!」

見ると、さらにその先に停まってる車の窓ガラスも割られてる。

ここでようやく、停めようとしたときに、ガラス片とゴミが錯乱している理由に思い至る。

強盗たちが、車の窓ガラスを割って、金目のものを抜き去った名残りなのだ。

黒人の兄ちゃんが、俺たちの車を指差しながら、続ける。

「いいか? アルカトラズツアーは船で行って、船で戻ってくる。その間、約3時間。船に客が乗っちまえば、誰もやってこない。強盗にとっては天国だ」

「お前らの車、後部座席にトランク載せてるよな。そんな車は真っ先に狙われる」

「悪いことは言わない。車を停めるなら、金額がかかっても、警備員がいて、セキュリティのしっかりしてるところに停めるべきだ。自分の荷物と命が大事だったらな」

……そうして、黒人の兄ちゃんは去っていった。

いやー、九死に一生を得たことを実感。あとで調べたら、2019年くらいに、サンフランシスコのあるカリフォルニア州では「10万円以下の窃盗は罪に問われない」というメチャクチャな法律が出来たらしく、強盗被害にあっても、大抵は泣き寝入りらしい。

ホント、アルカトラズ刑務所跡に行けなくて良かった。そして、名も知れない黒人の兄ちゃん、ありがとう。めっちゃ親切な人だったけど、もしかしたら、「ウィンチェスターハウス」から抜け出して、アメリカ旅行中、俺のことを見守ってくれていたの亡霊だったのかもしれない。

「ウィンチェスターハウスの亡霊」より、よっぽどサンフランシスコの現在の方が怖かった、ということで、このレポートを終了します。

(おしまい)
むらむら

むらむら