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日本のシドニー(仮題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

日本のシドニー(仮題)(2024年製作の映画)
1.5
[イザベル・ユペール、日本にて夫の亡霊と出会う] 30点

エリーズ・ジラール長編三作目。作家シドニーは日本で再販される初長編小説『影』のイベントのために、京都を訪れる。出迎えたのは溝口健三という物静かな男で、二人はイベント会場を含めた様々な場所を訪れる。シドニーは家族が全員亡くなった交通事故を基に『影』を書いており、長い時間を経て何の因果か再び交通事故で夫を亡くして以降は執筆を出来ずにいたが、"亡霊の国"日本のスピリチュアルな雰囲気の中に夫の幽霊を幻視し、彼との時間/彼を失ってからの時間に向き合い始める。それは同時に、似たような背景を持った溝口に少しずつ心を開いていく過程にもなっている。異物感を高めるために夫の幽霊がわざとらしい合成になっているのとか(異物感高めすぎて最早ギャグにしか見えない)、タクシー乗車中の背景映像が不自然に切り替わったりとか、意図してそうな選択が尽くスベってる上に、イザベル・ユペールが過剰にお辞儀するのとか、日本人を識別できずに間違えるとか(先日亡くなった吉武美知子さんに捧げられているのだがヴェネツィア上映時には漢字を間違えいていたとの情報もある、関心がないのだろうと特に驚きはないが私が観たやつでは合ってた)、そういった視線も気持ち悪く、『影』に共感した日本人読者が近親者を失った理由が原爆、阪神淡路大震災、東日本大震災と、取り敢えずジャパンの有名な戦災/自然災害入れとけみたいな姿勢であまり良い気はしなかった。生きるには死者を手放す必要があるってのは正しいが、交通事故と原爆を同列に語っていいのか?という疑問が残る。なんか、全体的に"日本"に幻想を見過ぎでは?終盤でボラギノールみたいになるのには笑ってしまった(あえて『ラ・ジュテ』とは言わない、そう言われたいんだろうことが見え透いているから)。『アースクエイク・バード』『Lost Girls and Love Hotels』『Iguana Tokyo』等々、ちゃんと日本ロケしたっぽい映画にポンコツが多すぎるのなんなんだろう?ちなみに、電車で爆睡する客役で市山尚三氏が出演している。特別協力みたいな欄に名前があった。TIFF審査員長で呼んだ関連かな。
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