アー君

悪魔のシスター デジタルリマスター版のアー君のレビュー・感想・評価

4.5
DVDもBlu-rayも持っているけど、リマスターによるリバイバル公開となれば、何回も観直していても好きな映画であれば劇場で臨場感を味わいたいので映画館へGOとなった。

公開時(1972年)デ・パルマは30代前半であるが、若気の至りも多少はあるだろうが、キャリアにおける出世作であり、個人的にはカルト・ムービーという範疇には入らない名作の部類である。

音楽面では当時ヒッチコックと距離を置いていたバーナード・ハーマンを使うことで功をなしたのか、殺傷時におけるムーグ・シンセサイザーによる二重奏は、観客に恐怖心を増幅する効果は絶大である。

※ハーマンとヒッチコックは「引き裂かれたカーテン」で仲は完全に袂を分けたようだ。

デ・パルマはハーマンにはオーケストラのようなサウンドを求めていたようだが、シンセサイザーを使ったことに反論はしなかったようだ。オープニングミュージックを最初は付けたくなかったようだが、ハーマンは反論をしていた。

監督よりも音楽家が物を言うのは如何なものかではあるが、日本でも武満徹が晩年の黒澤明にダメ出しをしていたのは有名ではある。

本題の要素として、シャム双生児が原因による妹の二面性はダニエルが心の中でドミニクとの共存から切断後に人格転移をしているが、論点はやや剥離するかもしれないが、一卵性双生児の性格の核心は似ていることもあるが、片方が医者と恋愛関係になったため、ドミニクとダニエルは一般的な女性心理も関わるが、極端に違う面が出る場合もある。

ドミニクとダニエルの二重人格的な関係は「サイコ」におけるノーマンと母親であり、殺人事件を目撃する女性記者は、窃視症気味の「裏窓」のジェフであろう。しかしデ・パルマがヒッチコックの亜流ではないのは、スプリットスクリーンを大胆に使う技術もさることながら、演出力の秀逸さである。

テレビ番組で知り合った黒人男性は妹のドミニクに殺され、事件を目撃した女性記者は真相を突き詰めたが、催眠療法で記憶を消されて、その医師も妹の手にかかる事となる。

ラストカットでソファの引き取り手が誰なのかを電信柱の上で見張っている電気工事士に変装した探偵で幕を下ろすが、この事件で誰が得をしたのか? 事件の真相は観客のみぞが知り得る不完全犯罪である。

これはいつも思うことだが、この時期のマーゴット・キダーは「ファントム・オブ・パラダイス」のジェシカ・ハーパーに似ている。

リーフレットはB4サイズの四つ折りで大きな仕様。拡げるとB2になるわけだから、大きくてちょっと見にくいかな(笑)コストの問題だと思うが、B2サイズでもせめて綴じ加工はして欲しかったかも。

[新宿シネマート 19:30〜]
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