七沖

ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突の七沖のレビュー・感想・評価

3.2
〝俺たちが、行く。〟
TVシリーズ『ウルトラマンブレーザー』の劇場版。主人公ゲントの口癖「俺が行く」を意識したセリフに、総力戦っぽい劇場版ならではの規模感が感じられて期待が高まるキャッチコピー。

ウルトラマンの劇場版を観に行ったのはかなり久しぶり。多分、ティガの劇場版以来だ。
久しぶりに劇場版を観たいと思ったくらい、TVでやっていた『ウルトラマンブレーザー』は面白かった。
結婚して一児の父が主人公、かつ職場でも隊長という位置付けで、大人でも十分楽しめる内容になっている。

そんな劇場版だが、個人的にはちょっと期待していたものと違った。
TV版の方がよっぽど大人の観賞に耐えられる展開で、劇場版は急に子供向けになったな、という印象だ。
ウルトラマンが子供向けなのは百も承知なのだが、それでもブレーザーは大人にもかなり目配せしたストーリー展開だったはずだ。
それなのに、一気に子供っぽい話になったという印象で、正直ストーリー部分はかなり興醒めしてしまった。まさに自分のことだが、大人って本当に勝手だな…笑
今回の敵が生まれた顛末だけでなく、ゲントたち大人の言動もTVより軽くなっているように思う。
上層部が何の制約もなく「好きにやれ」と指示してきたり(まあこれはTV版のラストあってこそだが)、何かあったからこそ電話してきた息子からの電話に「何かあったらすぐに連絡するんだ」で終わらせるゲントに違和感を覚えずにはいられない。
うまくいかない制約だらけの中に活路を見出し、未知の相手を分かろうとするからこそ、TV版は面白かったのに…。

反面、特撮は素晴らしく、今となってはゴジラ映画が手放してしまった手作りの良さが感じられるアクションシーンが堪能できる。
本当に最近のウルトラマンの特撮のレベルは高く、マーベルのように全てをCGで処理するわけではなく、安っぽさを感じないようにCGを用いつつ、物理法則に縛られた本物のセットが崩れていく。
これこそ日本が世界に誇る特撮技術だと、本当に思っている。
この日本最先端の特撮を観るだけでも、映画館に行く価値はある。
特に敵怪獣とアースガロン(防衛隊メカ)が至近距離で光線を撃ち合うシーンはカメラアングル含めてかなりアツい。本当にバトルはいいんだよなぁ。
でも力尽きたかのように見えたブレーザーが全然そんなことなくバトル再開するのはちょっと違和感だ。あのシーンいるのかな…?

ラストの顛末も、みんな良かったみたいな感じになっているけど、本当にこれで終わっていいのか、と思えるちょっとモヤモヤした展開だ。直接描かれていないが、展開的に結構死人が出たと思うのだが…。

ただ、それでも自分はウルトラマンブレーザーが好きなんだな、ということが再確認できる作品ではあった。
まだまだ続きが描けそうな話だし、残された謎もある。
これは劇場版の興収次第ではTV第二期を期待してもいいのだろうか。
本当にブレーザーのキャラクターも世界観も魅力的なので、ぜひこの世界のその先が観たい。
劇場版を観て、その気持ちはTV版を観終わった時以上に強くなった。
七沖

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