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スルタナの夢のnekokatzのレビュー・感想・評価

スルタナの夢(2023年製作の映画)
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最近の映画記録、TIFFの9日目にみた「スルタナの夢」のこと。ワールド・フォーカスのバスク映画特集の一本で、スペイン映画。

お話は随分ふわっとした「欧米人の旅情」みたいな作品だが、絵的にはけっこう良い面も。

スペイン人の女性アニメ監督イネスが主人公。
イネスはインド人の恋人と会うため、アーメダバードに旅する。現地の古書店で、「スルタナの夢」という小説に出会う。本の中に、「私に会いに来て」と書かれた絵ハガキが入っていて…という導入。

これは実在の小説で、1905年に書かれた「男女の地位が入れ替わる」話。
小説の物語が劇中劇としてインサートされる。

現実パートは素朴な水彩風のタッチだが、キャラが半透明で背景の紙テクスチャが透過しているのが特徴的(つまりデジタルでの水彩調)。
一方、劇中劇は切り絵風のアニメーション。
この現実パートはシンプルだが絵心がある。
無理に動かそうとせず、良い止め絵を描こうとしてるとこは好感が持てる。

イネスはインドを再訪し、ベンガル地方で女学校を創立した小説の作者ロケヤの足跡を辿る…という展開に。

上映後には監督トークが付いていた。
劇中のイネスは自分ではなくフィクションとのこと。

この映画、主人公ほかスペイン人の女性もインド人と同じ浅黒い肌色になっていたり、彼氏のアマールだけ肌がクリシュナの青色になっていたりする。
監督のトークを聴いた理解だと、フィーリングで決めていて、演出上のメタファーやルールは緩い(例外がちらほらある)。
そういう点も含め、欧米のアート系映画人のロマン主義的側面を強く感じた。

あと、ウクライナ紛争の影響で「スルタナの夢」の原作から描写を変えた点があるとのこと(太陽光線兵器から音響兵器に変更)。まあここは理解できる。

以下余談。小説の「スルタナの夢」、劇中劇から分かる範囲だと、抑圧下の女性作家が書いた「女性に都合良い寓話」という印象で、
フェミニスト小説と呼ぶには随分と他愛ないお話に感じた。
翻訳(ネットの個人訳)がここにあるようだ→ https://web.archive.org/web/20220714025506/https://cuttercourier.tumblr.com/post/148834532597/%E3%83%99%E3%82%B4%E3%83%A0%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%A4%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%8A%E3%81%AE%E5%A4%A2%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E8%A8%B3
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