むらむら

メイのむらむらのレビュー・感想・評価

メイ(2023年製作の映画)
5.0
上海を舞台にしたセミドキュメンタリー。「メイ」は、出会い系で彼氏を探そうとする女性の名前。東京国際映画祭の上映を鑑賞。

「メイ」というとどうしても「トトロ」の無邪気な幼女を思い出してしまうかもしれないが、残念ながら本作の「メイ」は72歳のお婆ちゃん。「メイ」というより、「カンタの婆ちゃん」とか「湯婆婆」に近い。

この「メイ」婆ちゃんの日常を追う話がゆえに、出てくるのは、ほぼ、ジジババだらけ。もはや老人ホームで撮影してるんじゃないか? と疑ってしまうほどに、ジジババのオンパレード。

買い物カートを引きずって買い物に勤しむ婆。
麻雀やカラオケに昂じる爺と婆。
ダンスを踊る爺と婆。

加えて、出欠大サービスとばかりに「メイ」婆ちゃんのシャワーシーンまで丁寧に撮影している。

「いやーん」とばかりに恥ずかしがって、シャワーカーテンを引く「メイ」婆ちゃん……。

……確かに俺も熟女好きを自称しているが、監督、ちょっとハードコアすぎやしませんかね。

とはいえ、高層ビルと井戸で水を汲む貧困街が同居して、わずかな年金で食いつないでる上海の老人たちの現状を垣間見ることが出来たのはとても面白い。超高齢化社会という意味では、中国も日本も同じような状況になってるんだなーって、自分の数十年後も想像して、なぜか共感してしまう。

共感といえば、安いアパートに帰ってきたらすぐに冷蔵庫をチェックする「メイ」婆ちゃん、全く俺と同じ行動様式で共感しかなかった。帰宅したら無意味に冷蔵庫を開ける習慣、俺だけじゃなかったのね。

そんなわけで、最初は大阪のオバちゃんみたいにガナリ立てる「メイ」婆ちゃんに対して「うるせー!」って感情しかなかった俺も、観終わった頃にはなぜか好きになっていた。もう一回シャワーシーン観てみようかな……。

72歳にもなって、やっぱり人恋しいもんなんやね、と思ってたら、ちょうど今日付けで、興味深い記事を見つけた。

「頼まれると断れない」81歳が覚醒剤の受け渡しで懲役9年…親切心?カネ目当て?孤立深めた末に
https://www.tokyo-np.co.jp/article/289279

記事によると、81歳の老人が、メールで勧誘された見知らぬ外国人の言われるがままに、覚醒剤の入った表彰用の盾を輸入して、逮捕されたとのこと。

……てか、まるっきり、この事件、クリント・イーストウッドの「運び屋」だよね。

このお爺ちゃんのやったことは犯罪で許されることじゃないけど、記事によるとこれまで「ロマンス詐欺、口座の悪用被害にも遭った」ということで、寂しい老人の現状を想像して同情してしまった。

見知らぬメールに惑わされて犯罪に手を染める孤独な生活より、「メイ」婆ちゃんみたいに、めっちゃポジティブに男を探して行動するほうが、幸せなんじゃないかなーと、色々と考えさせられました。

(おしまい)
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