KnightsofOdessa

西湖畔(せいこはん)に生きるのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.5
[] 70点

グー・シャオガン長編二作目。山水絵巻第二巻。前作『春江水暖』はカンヌ批評家週間でのプレミアだったが、本作品はなんとTIFFでワールドプレミアとなった。カンヌに落ちたと言ってた人がいたけど、今年の春に撮り始めたらしいので結構早い段階でこの時期(かそれ以降)のプレミアを考えてたんじゃないか。あと、ずっと『草木人間』と思っていたのだが、『草木人间』だった。"人间"は人間の意味はなく、この世みたいな意味らしい。樹木マンではなく、草木溢れるこの世界、的な。物語は杭州西湖畔にあるお茶畑で働く貧しい母親と大学生の息子が、一攫千金を狙ってマルチ商法に飲み込まれていく様を描いている。冒頭の"長いトンネルを抜けると茶畑であった"みたいな長回し(一部映像がカクついたのは一発撮りだからか)はやはり見事で、山神を起こすという登山を経由して夜明け前の茶畑を滑り降りる、自然から人間へというフォーカスがスムーズに展開される(wakeの希求はこれ以降も繰り返される)。しかし、物語は急速に自然云々から離れ、醜い人間の搾取合戦へとシフトしていく。あまりにも詳しく描かれるので、これは監督の近親者が巻き込まれた恨み節がかなり入ってるんじゃないかと邪推してしまう(インタビューでは親戚が関係者だったと明かしているが、これは自分が息子の立場だったというレベルだろ)。中盤のマルチ集会における露悪的なテンションの高さはギャスパー・ノエ『CLIMAX』みたいなバッドトリップ味があり、母親の行く末を案じる観客を更に消耗させる。人の回りをグルグル回るとこ『ミッドサマー』にあったような?序盤の茶畑で再婚云々の話をするとことかカメラ動かしすぎだし、たゆたうカメラ動かぬ自然という対比も本作品では頭とお尻にしかないので、人間を撮るには少々見辛い映像になっていた。でも、エンクレは今年ベスト級。梅林茂最高すわ。フィルメックスで前作上映後に一緒に撮った写真の無邪気な監督と今の監督の疲れた感じを見比べるに、色々あったんだろうなぁと思うなど。上映後、友人が"三部作の構想は『春江水暖』以前から決まってたって言ってたけど『草木人間』撮るにはあたって変更したりしたんかな?"と言ってたので誰か訊いといて。
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