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日本の熱い日々 謀殺・下山事件のKUBOのレビュー・感想・評価

3.8
先日NHKの未解決事件がおもしろかったので、いつか見ようとHDの中に眠っていた『日本の熱い日々謀殺・下山事件』を鑑賞。

「下山事件」は、あの松本清張や、浦沢直樹も『BILLY BAT』の中でも扱った昭和の未解決大事件。本作は矢田喜美男の小説『謀殺・下山事件』を元に映画化された作品だ。

そもそもこの事件は、当時(1949)の国鉄(JR)総裁が、全身の血を抜かれた状態で、列車に轢かれてバラバラ死体となって発見されるという、ミステリーにしてくださいと言わんばかりの状況で始まる。

また、残された証拠や具体的過ぎるタレコミも多いのに、それでも犯人に辿り着けないというまさにミステリーのような実話。

作品は新聞記者の矢代(仲代達矢)を主人公に事件を追うドキュメンタリードラマ形式。

仲代達矢の「眼」だけで魅せる演技は、さすが昭和の名優といった風格。そして今の日本映画界を背負って立つ名優・役所広司が若き新聞記者役でちょこっと出てるのも興味深い。

戦後の日本を感じさせる全編モノクロの映像も効果的だし、時間が進む度にインサートされる昭和の日本の大ニュースも、この事件と共に日本が復興していく様子を描いておもしろい。

この頃は科捜研というものがなかったから、科学捜査には東大が協力していたり、今では当たり前のルミノール反応が、この頃はまだ新しい技術扱いで警察の捜査に使われていなかったり、60年以上前のこととはいえ、いろいろびっくりする。

1981年の作品なので、この時点でわかっていることだけで作られているから、NHKが新事実として公開したアメリカ側から出た情報はもちろん無く、大きな闇の力が動いているといった不気味な恐ろしさのまま終わるが、これはこれで大変おもしろい。

でも、あれだけの新事実が出てきているのだから、そろそろこのネタでもう一度大作ミステリー映画として撮り直してくれてもいいな。
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