深獣九

悪魔がはらわたでいけにえで私の深獣九のレビュー・感想・評価

3.5
この手の映画が本格的に作られて、ましてや名だたる劇場で公開されるなんて、日本の映画界もついに目覚めたか! と界隈が歓喜したとかしないとか。いや、したに決まってんだろ!

〈目次〉
○グロとゲロと血にまみれた快作
○あのロイド・カウフマンが認めて出演までしちゃった!?
○やっぱソウルっしょ!

○グロとゲロと血にまみれた快作

もうすでにご承知とは思うが、この映画は理由もなく世界(千葉)が悪魔(死霊タイプ)だらけになってしまう、というストーリー。悪魔(死霊)と人間が共存する世界(千葉)なのだが、一部の狂信者を除きそこに争いはなく、極めて平穏な光景が広がる。客が来れば茶(ゲロ)を出すし、カレー(?)も振る舞われる。農業を営み、淑女は大型犬(力士?)を連れて優雅に散歩をする。私たちのいま生きている世界のほうが、よっぽど物騒である。
グロとゲロと血にまみれた映画ではあるが(そこも大事)、なんだか嫌な気分にはならない、不思議な映画なのだ。

○あのロイド・カウフマンが認めて出演までしちゃった!?

とはいえ、おぞましい死霊に襲われたり、首が1440°回転したり、目ん玉にドライバーを突き刺したり、チェーンソーで5体バラバラにしたり。ゴアでスプラッターな私たちも大満足だ。特にミドリゲロの長尺シーンは、永遠を感じた。監督の気概を見た。

さて鑑賞していると脳裏に浮かぶのは、あのトロマの傑作たちだ。自由奔放な展開といいアナログな撮影方法といい、監督は和製ロイド・カウフマンと言っても過言ではない。それもそのはず、ロイド・カウフマン本人がこの映画を認めており、DJ役として出演するほど。本家のお墨付きがあるわけで、これは期待するしかない。トロマ・ジャパン設立も夢ではない?

○やっぱソウルっしょ!
そして何と言っても気持ちいいのは、この作品からソウルが伝わってくること。面白い映画を作りたい、観客を楽しませたい、自分たちも楽しみたい、という雰囲気がビンビン感じられる。場面によっては、ほとんどのセリフが「ギャッ」のみだがwそれでも登場人物たちの感情が伝わってくる。こんなもん、ソウルがこもってないと成立しない。素敵すぎる。

また物語の重要なキーとして登場するのが音楽だ。命を救われた、と感謝の思いがこもった曲。聴いて心躍らないわけがない。じっさいみんな踊る。言葉なんていらない。魂の音があれば、人種や思想を飛び越えて絆が生まれるんだ。そんなメッセージが込められているに違いない。骨太な作品だ。

ほかにも心に刺さったシーンはたくさんある。
死霊の態度に戸惑いを隠しきれない野村啓介さんの表情。
2匹の犬役の役者さんはほんとうにデカかった。
意味深なラスト。深いのか、いやもしかしたらなにも考えて おや? 誰か来たようだ……。

そして、会場で再会したあの方。相変わらず素敵な笑顔とまなざしでした。またおめにかかりたいです。ぜひ告知をくださいね。お待ちしてます。

パンフレットに皆さん(巨犬含む)のサインもいただいたし、最高なひとときでした。
深獣九

深獣九