ごい

異人たちのごいのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.9
山田太一の原作を監督自身のルーツを交えて脚色した私小説的な作品

主人公アダムの一人称で語られる幼い頃に失った両親との邂逅、互いに共感しているようで年齢差ゆえのギャップのある謎めいた隣人ハリーとの出会いを経て、アダムの心境・救済がゆっくり丁寧に描かれている

今の今までベッドにいたのに突然実家のシーンになったりするなど、シーンの切り替わりがまるで夢の中ような転換をしていき、時間や空間が綯い交ぜになっている。登場人物も4人だけと非常に限られていて、現実か夢か、空想かすらわからないまま物語は進んでいく。

時たまハッとするような展開も交えながら、人の心を覗き込んでいるような気持ちにさせられた。淡い幻想的な映像も相まってずっと不思議な感覚だった。
「愛すること」と「愛されること」どちらが真の救済になるのか『All of Us Strangers』という原題についても考えて、観終わったあと少しボーっとしてしまった。

p.s.
アフターサンに引き続き、ポール・メスカルが強烈な哀愁を放っていて流石でした…
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