KnightsofOdessa

ロイヤルホテルのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ロイヤルホテル(2023年製作の映画)
2.5
[性差別の蔓延する場末のサルーンにて] 50点

キティ・グリーン長編四作目。彼女は、とある映画祭で審査員をした際に鑑賞した2016年のドキュメンタリー映画『Hotel Coolgardie』に衝撃を受けた。オーストラリアの田舎町にあるバーで働くことになった二人のフィンランド人女性バックパッカーが、地元の男性常連客に性差別的な言葉を浴びせられていたのだ。しかも、それがあまりにも常態化していたために、カメラがあることもお構いなしに卑猥な言葉が投げつけられ、カメラはそれらをすべて記録していたのだ。グリーンは前作『アシスタント』で主演したジュリア・ガーナーを再び主演に迎えて、この作品を映画化することにしたらしい。 物語はシドニーの船上パーティで金を使い果たしたハンナとリヴが内陸地の炭鉱町にあるバーでの仕事に来るところから幕を開ける。クソ汚い場末のバーとその上階にある劣悪な居住スペースも最悪だが、近くの炭鉱で働く男たちはもっと最悪で、毎夜やって来てはカウンターで動き回る二人に卑猥な言葉を投げかけ、大声で威圧し、酔っ払って上階の居住スペースまでやって来る始末。ハンナは男たちの凶暴性に怯え始めるが、リヴは流れに身を任せ、いつしかフレネミーのような存在になっていく。シドニーで出会った無害そうな男もハンナに会いに来たら一夜で有害男性へと染まってしまう。炭鉱に出稼ぎに来たまま居着いた異邦人たちの溜まり場であるこの町は、唯一昔からここで暮らすバーの店主によって危うい均衡が保たれていたのだが、彼の不在によって物語の緊張感は一気に高まっていく。船上パーティの男性店員の無愛想さと笑顔を求められる二人の対比とか、良い部分もあるのだが、全体的にキャラが記号的すぎる上に、取ってつけたようなラストはあまり気に入らなかった。特に、リヴの位置付けが後半にかけてハンナの引き立て役みたいになってたのは勿体なかった。
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