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SaltburnのAyaxのレビュー・感想・評価

Saltburn(2023年製作の映画)
3.8
Amazonオリジナル。
エメラルド・フェネル×バリー・コーガンのポスタービジュアルを観た時から絶対ヤバいヤツだと期待してた作品。
どストライクではなかったけど、面白かった。そんなところからもう伏線張ってたん?という。私が感じた全体的なお話の雰囲気は、「パラサイト」×「君の名前で僕を呼んで」。1960年の「太陽がいっぱい」がベースになってるとも言われていて、私は観てないから詳しくわからないけど、あらすじを読むと確かに似てる(なので、これから観る人は読まないで!)。
いつも通り、バリー・コーガンの演技は素晴らしく、ちょっとイカれた感じがすんごく似合う。きっとセンスが良いと思うの。友達になりたい人間。オリー役は、ティモシー・シャラメの可能性もあったらしい。私的にはバリー・コーガンで大正解。フィリックス役のジェイコブ・エロルディも長身でややケツ顎だけど、笑った時の顔が優しくチャーミングで、こりゃーみんな好きになっちゃうぜって感じ。度を越した貴族でめちゃ良い奴のパターン。ロザムンド・パイクも久し振り!根性悪そうな女をやらせたら右に出る者なし。
そしてロケ地が最高!オックスフォード大学や郊外のフィリックスの実家(お屋敷超えて城!)の雰囲気が抜群に良い。歴史ある古い建物の窓から入ってくる光の美しさもしっかり捉えていて美麗!英国に興味がなく生きてきた私もこれは素敵ね〜と溜め息。絵になる印象的なシーンがとても多く、英国に行く機会があればロケ地に行ってみたいと思った。ちなみにエメラルド・フェネルもオックスフォード卒らしい。才女〜。
ストーリーの話に戻ると、最後は怒涛の畳み掛けで、え?え??ってなる。観終わった後に、どこからそういうつもりだったのか考えるのも楽しい。面白いけど自分がハマらなかったのは、主人公の屈折した愛情に1mmも共感できるところがなかったからかな。
何にしろ、こんな話をオリジナルで書けるなんて凄まじい才能。似てる作品があると言っても、世の中のすべての芸術にアウトプットに誰の影響も受けてない物なんてないからね。彼女の作品は、まだ「プロミシング・ヤング・ウーマン」とこれしか観てないけど、強い作家性があって、打点が高い。彼女が監督脚本だったらとりあえず追っておこうと思わせる。ちなみに次回作は、「ジョン・ウィック」のスピンオフらしい(脚本のみ)。
そして、プロデューサーにマーゴット・ロビーの名前。本当に才覚あるんだな。
全体的に賛寄りで書いちゃってちょっと心配になってきた。全然爽やかではなく、癖も強いので、ちょっと人を選ぶ作品だよ。ラストは全裸でダンス。
日本でもタイトルが「Saltburn」のままで、日本人はとっつきづらいかなと思った。せめて「ソルトバーン」ってカタカナの方が良かったと思う。日本版の予告がなかったので、日本で売る気ゼロなのかも。そんなことってある??
内容に関係ないけど、バリー・コーガンの名前の発音はどれが正しいのか未だによくわからずで今年のBAFTAの映像とか見て確認したい。

〈以下、ネタバレに言及〉
オリーは、最初からソルトバーンのあのお屋敷を奪う気でいたのか、最初はそのつもりがなく途中から気が変わったのか。私はいろいろ考えた末、後者かなと思った。
最初はフィリックスに取り入って(好意ももちろんあった)、彼の寵愛を受けながらあわよくば上流階級の仲間に入るのが目的だった。なんなら仲良くなれれば、一番の友達になれれば良かった。
けれども、二人で実家に行く(=嘘がバレる)のは想定外で、そのせいで拒絶されてから作戦変更になったのかなと。浴室に携帯電話を忘れるところから策略だったというのは考えづらい。
拒絶されて、彼が手に入らないならいっそ殺して彼になる。全て奪って彼のポジションに自分がつくというところかな。
ちなみにエメラルド・フェネルもインタビューで、オリーはフィリックスに恋愛感情を抱いていたとコメントしてるらしい。
最後までオリーとフィリックスはプラトニックだったのも、オリーにとって彼が特別な人だからという感じがした。
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