mmm

52ヘルツのクジラたちのmmmのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
3.9
公式からもアラートが出されていますが、
虐待や自死などのシーンがあります。
心配な方はストーリーを確認したり、
体調の落ち着いた時に通路の近い席をとるなど
することをおすすめします。
--------------

原作は町田その子氏の同名小説・未読

“52ヘルツのクジラ”とは、
他の仲間たちにも聴こえない
高い周波数で鳴くクジラのことだそうです。

心に傷を抱えた人が呼応するように
出会っていく話

予告程度の知識だけだったのですが、
想像以上にハードな内容でした。



●●●ここから先は作品の内容にふれています●●●

親からの虐待を受けて育った貴湖
心が擦り切れ、生きることも諦めたくなってしまった時に
かつての友人・美晴やその同僚の安吾に救われ、
今までの生活から徐々に解放されていきます。

その過程で、貴湖が幸せを掴みかけたようで
裏切られてしまう大きな出来事がありました。

いつも親身に寄り添い、味方でいると
言ってくれた安吾でしたが、
貴湖はありがたいと思いつつも、
自分の幸せとの狭間で悩むこともあり
2人の関係性に距離が…

自身のアイデンティティや貴湖への気持ちに
思いあぐねた安吾は、自ら命を絶ってしまいます。

貴湖は、深い喪失を抱えたまま祖母の思い出の地に移住します。
静かに暮らしていく中で、かつての自分とよく似た境遇の
少年と出会い、いつかの自分が救ってもらったように、
彼に寄り添うのでした。

原作未読の状態で書くのもなんですが、
小説ゆえに成り立つ展開と感じるところや
2時間前後にまとめることが難しい作品だったと思います。

正直にいってしまえば、やはり展開が駆け足だったり
(小説や漫画の宿命かと思いますが)
映像化してしまうと見せ場のようになってしまう
部分を感じてしまったことは否めません。
様々な年齢や立場の方が鑑賞されることを前提として
つくられたのかなぁと勝手に思っています。

この作品がいいなと思ったのは役者陣や制作方法。
無論、記事や舞台挨拶のトークから感じた
ほんの一部なのかもしれませんが、
バックグラウンドが当事者とは異なる
役者さんたちが、出来る限り役に寄り添うこと、
また座組がそのための配慮や取り組みを
されたことを感じました。
いいな…というか、他の作品にも広がっていくことを願うばかり。

安吾の顛末は悲しかったですし、
自死でない道を歩んでほしかったと思いますが、
このような道を選んだ方も実際にいるはず。

マイノリティが消費されるという解釈も
存在するかと思いますが、
ストーリーの中であっても、
ひとつの事実として受け止めることが
大事なのかなと考えました。

杉崎さんの感動したり分かった気に
なりたくない(要約)という言葉のとおり、
他者の痛みに耳をすますこと。
知った、気づいた、学んだの
その先につなげる一歩を考えていくことが
大切なんだときづかせてくれる作品でした。

※作品の展開を”ネタバレ”としたくないという
制作陣の意図を尊重し、ネタバレ設定は
しませんでした。

追記
公開後宣伝がありがちな
「感動しました!」
「泣けました!」って
涙流してるお客さんの映像って
いうこは残念ですね。
もちろん興業に繋げなきゃいけない
とは思うけど、難しいところなんですかねぇ。
mmm

mmm